「30年間、給料が上がっていない日本」で、自律的に働くことが大事な訳とは。
賃上げの動きがマスコミで騒がれましたが、私たちは、どうやって給料を上げていくのでしょうか。働くものとして諦める前に、私たちは給料について、真剣に知識を深める必要があります。そして、どのように収入を上げるのか、一日も早くその方法を理解し、行動に移すことが求められます。まずは、知識と給料を増やす方法について、理解を深めることから始めましょう。
こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。
*
まず、給料が上がっていないのは事実なのかを調べてみました。
たしかに、給料は過去30年上がっていない①
ご存じの方も多いと思いますが、日本人の収入は、1995年あたりからほとんど400万円台で上がっていません。400万円以下の給与所得者数は、全体の53.6%。給与所得者の約半数が年収400万円に達していません。つまり、「日本人の平均年収は400万円を超えていますが、約半数の日本人の年収は400万円以下である」ことが分かります。ちなみに2022年9月に公表された国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」 によると、給与所得者の平均給与は443万円です。これを男女別にみると、男性545万円、女性302万円となっています。管理職になる人ならない人での男女差や、非正規の人数が女性は多いためでもありますが、それにしても男女格差があります。
なぜか、給料は過去30年上がっていない②
さて企業側の視点で見てみましょう。財務省が2022年9月1日に発表した法人企業統計によると、企業の内部留保は前年度比6・6%増の516兆4750億円。10年連続で過去最高を更新し、この10年でみた内部留保の増加率は約8割にのぼったのです。コロナ禍で落ち込んだ経済活動が回復し、企業の業績が好調だったからですが、設備投資や人件費の増加は鈍く、景気の好循環に向けた課題となっているとあります。ユニクロの大幅賃上げというニュースがありました。しかしながら、他社はそこまで人件費を増やしたというニュースは聞かれませんでしたし、未来の成長のために設備投資もしてこなかった企業が多かったようです。
海外では、30年間 右肩上がりで給料は上がっているという事実!
日本では給料が上がらないだけでなく、消費税率が上げられ、各種税金も高くなり、追い打ちをかけるように、最近では物価も上がっています。生活は苦しくなる一方です。
デービッド・アトキンソン氏の 『給料の上げ方――日本人みんなで豊かになる』で、解説されていますが、世界での給与を国際比較してみると、日本だけが横ばいで、海外の国々(アメリカ・イギリス・カナダ・ドイツ・フランス)は、年々給料が上昇しています。同じコロナの経験を持っていたにもかかわらずです。 そして消費税も日本よりも高いのに。
なぜ日本では、給料が上がらなかったのか!
日本の企業では、年功序列での給与形態を採用してきました。極端に言えば、頑張ろうが頑張るまいが、ある意味給料が上がり、5年くらい勤続すれば何らかの役割がつくというように、階段方式で昇給してきたのです。つまり、私たちは、「会社はちゃんと我々のことを考えてやってくれるはず」と、勝手に思っていたのです。
そして、企業のテーマは、「みんな一緒に」という考えだった。そのほうが、階段方式で新入社員が入ると定年の人は退職するというように、人件費は循環されるわけで、会社としては人件費をコントロールできたのです。でも30年の間に、社会環境が大いに変化しました。リーマンショック、バブル崩壊、定年延長、などです。危機を切り抜けるために、多くの企業が、攻めの戦略でなく、守備を選択して、設備投資や人件費に資金を投入しなかった。その結果、給料は30年間置き去りになったといえます。
日本の現状
今では物価が上がり、給料は上がらない。特に管理職になるメリットが、30年前に比べて無くなってしまったのです。管理職になってもメリットが見えない、わざわざ大変な仕事をする価値が見えなくなったということが推察できます。
いま企業の多くは、働く人を「働く人材」ではなく、残念ながら、単なる「headcount:働く頭数」としての認識になっているように思うのです。海外から日本に働きに来る人たちは、現在減っています。なぜなら、安い給料の日本では働きたいと思えないからです。そして優秀な人財は、ほかの国に行ってしまいます。
日本の技術開発に携わってきた優秀な人財は、中国に高給で引き抜かれ、さらに日本で働くよりも、やりたかった研究が進められるので、イキイキと働いていると話していました。今の日本企業は、国際競争に参戦できていない状況にいるといえます。
*
自律的な働き人(はたらきびと)になりましょう
このような状況ですが、自分一人が文句を言っても、会社は動くわけがないと思えますね。でも、受け身の働き方は、あなた自身の損失になるだけです。本当の意味で、自律的な働き人(はたらきびと)になって生きていきましょう。人材から人財に自分を育てていくことが必要になります。
どうやったら、自分の給料が上がるのかを考えてみたことがありますか。
まず前段階として、あなたの収入を上げることができるのは、「あなた自身である」ということを理解しましょう。
その上で、あなたの現在の収入は、妥当か否かを検討すると良いと思います。市場価値をみるという意味です。市場価値があるなら、あなたにとっての強みになります。でも、将来のAIの進歩も意識しながら、未来の市場価値を探索することも大切なことになります。そして人生100年を考えたとき、先々の収入を得る手段も考えて準備できると良いですね。
あなたの仕事経験は、あなただけの強みが詰まっているはず。専門的な職種であれば、専門知識はもちろんあります。そうでなくても、好きなことを仕事にしている人は、仕事をすることが苦痛でなく、むしろ楽しくてやり続けた中に、自分ならではの仕事の進め方や、力の注ぎ方を知っているはずです。あるいは、仕事が好きではないけど仕事をしてきた人もいますね。少なくても、どうやったら効率的に仕事ができるかを考えて仕事をしてきたのではないでしょうか。または、仕事経験から、“あなたの好きな仕事”が見えてくるかもしれません。
具体的に “給料を上げる方法”を Chat-GPTで、探索してみた
Chat-GPTに、“稼ぐ方法”と“給料が上がる方法”について質問しました。かなり現実的な回答が出されました。
●稼ぐ方法について聞きました。ざっと下記のような回答がでてきました。
1.専門的なスキルを身につける:自分が得意なことや興味を持っている分野で専門スキルを身につけ、それを生かした仕事をする。2.資格を取得する:自分が得意なことや興味を持っている分野での仕事をする。3.副業を始める:4.投資をする:ただし、リスクがある。
●一般的な給料が上がる方法も聞いてみました。
1.会社や職場の業績や成果が目に見える形で現れるようであれば、その結果に応じて給料が上がる場合がある。役割が変わった場合に給料が上がることもある。
2.転職:自分が働いている会社や職場での給与が、自分が希望する水準に達していない場合は、他の会社に転職することで給与を上げることもできます。でも経験を積む必要があるため、準備や努力が必要です。
3.スキルアップ:自分の能力やスキルを高めることで、自分の市場価値を上げる。たとえば、資格を取る、語学力を磨く、専門技術を学ぶなど。
4.ボーナスや手当を交渉する:家族手当、営業成績に応じたインセンティブなどを会社に交渉することで給料が上がることもある。
*
給料を上げる選択肢は、4種類:●会社に対して自分で交渉する、●副業を持ちダブルワークする、●転職する、●専門的スキルや資格を取得する(自分の市場価値を上げる)。投資するという選択肢も出てきましたが、リスクが高いように思うので省きました。
4つの選択肢からどれを目指すかを見極めていく。そして、これからは、自ら交渉する力を高める必要がある。
私の場合は、仕事を始めてから10年目くらいの時(40年前の話ですが)、日本の給与体系に納得がいかなかった一人です。特に女性という立場から給与格差があったわけで、同じ仕事をしても差がつくということが理解できませんでした。悔しさもあったし、情けなくもありましたね。そこで、ぜひとも外資系の大手企業に転職しようと行動に移したわけです。デザイナーという専門性もあったと思いますが、転職して確かに男女均等での年収になりました。今でもその時に行動してよかったと思っていますし、事実人生が変わりました。自分の考えをもって積極的に仕事をすることが求められましたが、そういう環境を求めていた私は、本当に楽しく仕事ができたと思います。
自分の給料は、自分のセルフエスティームの表れでもある
給料が高いから良いというわけではありませんし、人と比べるものでもありません。自分自身が、居心地良いと感じる生き方はどういったものか。自分自身がやりがい・使命を感じる仕事はどのようなものか。それが分かる自分であったら、それがあなたのありたい姿なのです。その時、あなたのセルフエスティームは肯定的に自分を評価していることになります。その上で、あなたの収入を決めていきます。
そう、セルフエスティームは、ここにも表れてきます。自分を正しく評価できる自分になることです。
まず、自分自身がどのような生活を望んでいるのかということを具体的にイメージしてください。自分自身との対話をしましょう。
私は個人事業主として、現在は起業しているわけですが、たとえば、私の商品をクライアントが買ってくれれば、仕事になります。でも、私の値段つまり私の給料をいくらにするかを決めなければ仕事になりませんね。相手の言い値では、みじめな生活になりそうです。つまり、自分の価値を自分で決めなければならないのです。
でもこれは、起業家だけの話ではありません。働くひとり人が、自分の給料を自分で決める意識が必要だということです。もちろん、それに見合った実力をつけるのは必須です。
人生100年といわれる昨今、自分の人生はどうありたいのか。本当の意味で、自律的な働き人(はたらきびと)になって生きていきましょう。人材から人財に自分を育てていくことが必要になります。
自分の人生は、自分で切り開いていくしかありませんし、互いに応援しあって、切り開いていけるものです。行動することで、いまを乗り越えていけます。
*
参考文献:<デービッド・アトキンソン 『給料の上げ方――日本人みんなで豊かになる』 東洋経済新報社 2023年4月20日><朝日新聞DIGITAL 『21年度の企業の内部留保500兆円超 10年連続で過去最高更新』2022年9月1日><国税庁:『令和3年分 民間給与実態統計調査』>