私たちは、なぜ欲しがるのか。”真似ること”の裏側に｢欲しがる理由｣があった。
あなたは、どんなものを欲しいと思いますか。たとえば、推しのタレントが着ていた服？ それとも、ブランド品？ または、仕事で成功したい、幸せな家庭を築きたい。起業して自由な時間と安定した暮らし。それとも、とにかくお金を稼ぐなどなど、いろんなことが浮かぶかもしれませんね。
最近、あなたが欲しいと思ったものは、何ですか？ そしてなぜ、あなたはそれを欲しいと思ったのでしょうか。
こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会（JSELジェイセル）の小西です。
いま私たちは、基本的な欲求は満たされて生きているといえそうです。戦後の物のない時代から、高度成長の時代に。豊かさを形にするかのように冷蔵庫、テレビ、洗濯機、自家用車、戸建てと、モノを求める時間が増えていった。そして今、欲しいと思うもの(欲望)を探す時代になっている。
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そもそも、”人が持っているものを欲しがる”って、本当なのでしょうか？
“欲望(Desire)とは、人が追いかけるに値すると信じる、特定の人や物に引きつけられる、人生における複雑で不可思議な現象。欲望はモデルを必要とする点で、欲求(needs)とは異なる。「人間とは何を欲すればいいのかわからない生き物であり、決めるために他者を参照する」とルネ・ジラールは述べた。欲望は人を超越的なものの探求に向かわせる。”と表現されている。
『欲望の見つけ方』より引用
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たしかに、私の小さい時に流行っていたのは、バービー人形や、リカちゃん人形。友達がみんなに見せながら、自慢げに話しているのを見て、私も真似したいと思ったのです。“私も同じことをしたい。”と。他者を真似るという欲望が現れた瞬間でした。今振り返ると、その友達と一緒に遊びたい気持ちと、私もあなたと同じものを持っていると主張したかったのかもしれません。
たとえばこんなこともあります。SNSで人気があると分かると、自分も真似したいと思い、何とか手に入れようと情報を集めて、手に入れるために必要とあれば行列を作り、躍起になって手に入れようとする。そして、ひとたび手に入れば、SNSで手に入れたことを周囲に自慢する。
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「私も真似したい」と思ってしまうことを利用したのが、広告宣伝効果ですね。企業で画期的で魅力的な新製品が生まれると、それを欲しいと思ってもらうために、その商品に相応しいタレントを起用します。その商品が魅力的に伝わるように美しい映像で表現され、欲しくなる環境を作ることで、人々は手に入れたいと思うのです。
また、ビジネスでも、あいさつ一つでも、握手する、お辞儀をする、ハグするなど、それぞれの国の文化やしきたりを真似することで、関係構築の役割を担っているといえます。
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別の視点もあります。たとえば、あなたの会社の同僚が、自分と同程度の能力で、働く時間も変わらないのに、自分より収入が多かったことが、偶然わかってしまった時。あなたは、同僚と同じ世界で仕事をして、先を越されたことに競争心が湧くでしょう。そして、うらやましいという感情と、妬ましいという感情が複雑に心に渦巻いてくる可能性は高いと思います。同僚に追いつけ追い越せと、意欲的に頑張ろうと仕事をしだすことが考えられます。潜在的に同僚を真似て、もっと上を目指す行動を取ろうとします。
真似るということは、お兄ちゃん、お姉ちゃんが持っているものが欲しくなって、駄々をこねたりすることも当てはまります。無意識の中に、お兄ちゃんを真似たいー張り合いたいーという競争心が芽生えているのです。
つまり、あなたと関係が近い、環境が近いほど、競争意識は大きなものになるわけです。
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そもそも、なんでヒトは真似てしまうのでしょうか。
アリストテレスが、2500年近く前に「真似ることは人間が幼少期から自然に行っていることで、この点において人間はほかの下等動物より優れている。人間はこの世で最も真似ることに長けた生き物なのである。」と言っている。
『欲望の見つけ方』より引用
じつは、“赤ちゃんは真似るのがとても上手だ”ということが、実験で裏づけられています。アンドルー・メルツォフの研究は、人間は真似る能力を持って生まれてくることを示しています。1977年に行われた彼の有名な“新生児に向かって表情を変えると、それを真似るか”という実験があります。それは、生後32時間の赤ちゃんでも、メルツォフの舌を出したり、おかしな表情をしたりする表情を 赤ちゃんは驚くほど正確に真似たというのです。
アリストテレスが言った通りでした。人間を始めて見た“赤ちゃん”は、「自分は、目の前の生き物と同じ生き物で、顔があり、それを使って同じことができる」と理解しているのです。不思議ですね。
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真似る(模倣)の欲望には、 “サイクル1とサイクル2” 二つの真似る力がある。
サイクル1は、ネガティブなサイクルで、争いにつながる破滅的な欲望のプロセス。周りの環境に影響されて行動している。他人は自分が持っていないものを持っていて、双方の欲望が満たされる余地はないという誤った信念のもとに回っている。欠乏、恐れ、怒りといった心理から生まれる。争いは違いからではなく、同じであることから発生する。
『欲望の見つけ方』より引用
サイクル１は、あなたの人生で、他人と競うことに時間を使っている真似る力
コロナが始まって、みんなマスクをするようになった。不織布のマスクが良いと言われてから、ドラッグストアで、競ってまとめ買いする人が増え、軒並みマスク不足になったことを思い出します。多くの行動は、このような欠乏・恐れの心理から、トイレットペーパー、マスク、など過去にもほかの人を真似て、そして競って行動してきましたね。
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サイクル2は、ポジティブなサイクルで、建設的で価値を創造する欲望のプロセス。共通の利益を求める欲望で人々をつなぐ。それは豊かさや相互に与え合うといった心理から生まれる。このサイクルは世界を変える。
『欲望の見つけ方』より引用
サイクル2は、あなたの人生で、本当に欲しいものを生み出すための真似る力
あなたが本当に欲しいものは、家族と過ごす時間をもっと豊かに充実できる出来事を増やすためかもしれないし、自分の興味に対して時間を忘れて取り組んで、あなたの心が満たされることかもしれない。未知のものを生み出す創造的な営み、そういうことなのかもしれません。新たな何かに挑戦して夢中になれること、未知なるものに没頭する何か。
アリストテレスは、人間には高度な真似る力があり、そのおかげで、新しいものを生み出すことができると理解した。だから、私たちは、複雑なものでも真似る力があるから、言語があり、音楽や料理が世界に溢れているといえますね。
あなたの人生で、本当に欲しいものは何か
キャリアカウンセリングでクライエントから「大学を卒業して、あまり深く考えずに、この仕事を選んで10年が経った。本当に自分のやりたいことは何だったのだろうと。私はこのままで良いのだろうか。」と言われることが多々ある。
サイクル1の真似ることは、ある意味、自動思考で生きていることになる。何も考えず、自分を理解しないで、他人を追いかけて真似ていく人生になる。もっと上に、もっと利益を、もっと愛を、もっとお金を・・・。他者と競い合って、私たちは、「もっと、もっと」の中で生きているのです。
自分自身を俯瞰して、今あるものを手放すことから、サイクル２の本当に欲しいものに気づくことができると思います。
あなたが欲しいものの本質を知るには
あなたが欲しいものの本質を知ることは、重要です。あなたは、ある人の生き方を真似たいと思うかもしれません。でもそれが本当にあなたが欲しい生き方か、掘り下げる必要があると思います。その人の生き方のどんなところに真似したいという感情が動いたのでしょうか。どんな時間をあなたは過ごしたい思ったのでしょうか。
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あなた自身の”本当に欲しいもの”を知るために
あなたの人生で、サイクル２として、あなたが本当に欲しいものを5つ挙げてみましょう。そして階層ごとに1から5まで順位をつけてみてください。5つ選ぶのは、自分自身に語り掛けて、あなたの人生で本当に欲しいものかどうか、取捨選択していくプロセスでもあります。
自分の中に、“欲しいものを選択し階層順位を決める”そのプロセスの中で、あなたは”欲しくないもの”に気づくことになります。
他者と競い合って、私たちは、「もっと、もっと」の中で生きていることから脱皮でき、自分らしく成長感をもって生きていけるように思います。
私の”本当に欲しいもの５つ”は、自律的に生きる力、セルフエスティームによって人を元気づけること、家族との安らぎある生活、気兼ねなくつきあえる友人との絆、大好きな卓球を続けて健康な身体でいる、この５つになりました。順位もこの順です。
この５つに絞れたことで、自分が本当に欲しいものに時間を使うことができ、良いと思うことはシェアし、また学びの輪が広がると思います。やっていると心が満たされる。共に探求して互いに成長できる。そんな世界を紡いでいけたら、幸せを感じることが、さらにできるようになると思いました。
あなたも是非、取り組んでみてください。
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参考文献：＜ルーク・バージス 『欲望の見つけ方 お金・恋愛・キャリア』 2023年2月25日 株式会社 早川書房＞