不確実な社会では、人は、なぜか間違った判断をしてしまう訳。
不確実な今、会社の経営方針が変化した。職場の風土も変わってしまった。それによって人間関係もギクシャクしている。このような変化が身近に起きています。働き方が変化して仕事のやり方も変わってしまい、なんだかやる気がでない。そのような時、チームの誰かひとりが退職すると、他のメンバーも辞めていくという負の連鎖が起きやすいものです。親しい同僚が転職することを知ったとき、あなたは、心の中で呟いたことがあるかもしれません。「自分はこのままでいいのか?」と。
こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。
“周りのみんながやっているなら、それは適切な行動だとみなして、その行動を選択する”ってことは、今までだったら、うまく機能することが多かったかもしれません。
でも不確実な社会では、あなたの脳は日々脅威にさらされた状態なのです。そんな社会で、「どう行動したら良いのか?」を見極めるのは至難の業かもしれません。
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先の見えない時代に、未来を正しく判断するには、どうしたら良いか。
そして私たちは、どのように”行動を決めている”のでしょうか。「よく考えて決めている!」と言いたいところですが、じつは、そうとは言い切れないのです。
今回は、人が間違った判断を 何故かしてしまう、“社会的証明の原理”について、4つの具体的ケースでお話ししようと思います。
私たちが日々経験してきた日常生活の動作は、すぐに判断できています。例えば、朝起きてから家を出るまで無意識のうちに行動できていますね。つまり、そのほとんどが自動的に判断しているのです。それを「判断のヒューリスティック」と言います。
しかし、コロナ禍によって、私たちは、今まで経験したことのない厄介な出来事に遭遇してしまいました。
当初、コロナ禍で多くの先生や専門家という人たちが、専門知識を述べていらっしゃいました。誰も経験したことのないコロナについては、いろんな捉え方がありましたね。そんな状況で、私たちは、マスコミ報道でよく顔を見る先生や、SNSなどから“いいね!”をたくさんもらっている先生が正しいように思えたのではないでしょうか。
これは、“周りの人たちが、何を正しいと考えているか”を基準にして物事を判断するー社会的証明の原理―によって導かれています。通常だったらその判断でもよかったのですが、コロナ禍は周りの人も良く分かっていない状況、つまり不確実な状況では、社会的証明が当てにならないという事実があります。
早速、人が間違った判断を 何故かしてしまう、“社会的証明の原理”について、解説します。そして、どう対処していくかも紹介します。
1.じつは、状況が不明確で自信がないとき、人の判断は間違えやすい
過去にあった有名な話があります。ニューヨークのジェノヴァーズ事件です。38人の目撃者がいたのに、誰も警察に通報しなかったというものでした。それもニューヨークの路上で30分以上の間に、3回にわたる襲撃を受けていたのに。大勢の人がその場に居合わせながら、誰ひとり犠牲者に対して手を差し伸べようとしなかった。この事件について、心理学者のラタネとダーリーは、多くの目撃者がいたから、誰も助けなかったと分析しました。みんなそれを見ていたから、私がやらなくても、きっとほかの人が通報しているだろうと思っていた。また、その時周りの人たちの行動を見て、同じ行動を選んでいたというものです。集合的無知と言われている現象だそうです。
影響力の武器より抜粋
もし今、この事件と同じことがあなたの前で起こったら、あなたはどうしますか?
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”人の振り見て”だけでは、ダメ!
この事件の話は、もしかしたら皆さんも聞いたことがあったかもしれません。黒人女性が犠牲になった事件でした。
このケースとは違いますが、私たちの身近なところでも、同じようなことが職場で起きていますね。みんなが残業しているから、みんなと同じように自分も残業しないとまずいのではとか、休暇を取ろうと思うけど、周りが休暇を取らないから、みんなと同じように私も休暇は取れないって思ったことです。周りに合わせてばかりでは、自分が疲弊してしまいます。自分らしく生きなければ生き抜くことはできない時代です。
現在の不安定な状況の中で、行動を起こすことは勇気がいることですが、あなたは今何を感じ取っているのか、自分はどうありたいかを思い起こし行動することを忘れないでください。
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行動に迷ったとき、「私はいま、集合的無知に陥っているのかも!」と、自分に問いかけることが重要です。
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2.専門家=正しい?
コロナ禍で、科学者や医療従事者が口をそろえて新型コロナウイルス・ワクチンやマスク着用の必要性を訴えました。一方で、SNSなどではそれらを陰謀説などと否定する専門家(?)が勢力を伸ばすなど、2020年に発生したパンデミックは社会を大きく揺るがす議論に発展しました。
それについて、アムステルダム大学の心理学者であるSuzanne Hoogeveen氏らの研究チームは、24カ国で募集した1万195人のボランティアを対象に、発言の信頼性の評価が発言者の属性に、どの程度影響されるのかを確かめる実験を行いました。アルゴリズムが自動生成したデタラメな文面を、「科学者の発言」もしくは、スピリチュアルな分野の第一人者である「教祖の発言」として参加者に示して、どのくらい信頼できるかを回答してもらいました。
この実験の結果、科学者の発言はスピリチュアルな教祖の発言より信頼性が高いと評価されることが分かりました。具体的には、同じ意味不明な文章でも「科学者」の発言だとすると76%の参加者が「信頼性が高い」と評価したのに対し、「教祖」の発言だと55%にとどまったとのことです。
理解不能な文章でも「科学者の発言」だと思うと、もっともらしく見えてくる現象を、研究チームはアルベルト・アインシュタインにちなんで「アインシュタイン効果」と呼んでいます。
Gigazine ギガジン オンラインマガジンより抜粋
“専門家の先生が言っていることは、真実に違いない“と脳が自動的に、”先生=正しい“と判断する傾向があるということですね。
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事実・情報を鵜呑みにしない。クリティカルに吟味して、自分で選択する必要があるようです。
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3.“自分と似た他者”のリードに従う傾向がある
社会的証明は、人の意思決定に多大な影響を及ぼしますが、ニュースで有名人の自殺を報道した後、自殺者数が増加するという事実があります。
米国の社会学者ディヴィッド・フィリップス(David P. Phillips)が、1974年米国大手紙の自殺報道によって自殺者数の増加に影響を与えていた可能性を明らかにしました。彼は、その現象を「ウェルテル効果*」と名付けました。
*ウェルテル効果:命名の理由は、二世紀以上も前の話ですが、ゲーテ著『若きウェルテルの悩み』の発刊後に、主人公のウェルテルの自殺に影響を受けたとみられる自殺がヨーロッパ中で増加していたことから名付けたものでした。
日本では、1998年に人気ビジュアル系バンドX JAPANのギタリストhideが自宅で亡くなった際にファンの後追い自殺が急増。この際には警視庁の要請でX JAPANリーダーのYOSHIKIが記者会見をひらき、ファンに自殺を思いとどまるよう呼び掛けるという社会問題になりました。2020年では、人気俳優・三浦春馬さんと竹内結子さんの自殺によって、「ウェルテル効果」とよばれる自殺者が出ていた可能性があることが、厚生労働省の分析で明らかになっています。
この社会的証明は、自分にとって重要な人物がその思いにどう対処しているかなのです。その人物の行動を正しい行動と判断して、真似て同じ行動をとるのです。
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他者を真似るのでなく、すでに自分の中にある、あなたの”ありたい姿“を具現化しよう。
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4.あなたを動かす力
ある一つの経験から”私は〇〇が苦手“と脳に刻まれると、自分から苦手に取り組もうとは思わない傾向になります。そのような”苦手という思い込み“の認知の歪みから行動できない時には、社会的証明の原理をプラス方向に利用して、思い込みをコントロールできるケースがあります。
他者の行動から、思い込みが消える
心理学者のアルバート・バンデューラは、この社会的証明で、望ましくない行動を取り去る方法の開発をリードしてきました。初期のある研究で、犬を怖がる3歳から5歳の子供たちを選んで、その子たちに“小さな男の子が、犬と楽しそうに遊んでいる様子”を1日20分見せました。するとわずか4日後には、子供たちの67%が犬を可愛がり撫でまわせるようになったのです。その後、1か月後に再び調査したところ、恐怖心は低いままでした。最も効果があったのは、たくさんの子供たちが、さまざまな犬と接している場面を見たときだったそうです。他のみんなが、犬と楽しく過ごしている事実を見て理解したから、恐怖心が消えたのですね。
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もう一つ、過去にあった社会的証明の有名なサクラ戦略のケースがあります。
他者の行動が、好奇心を生みだす
1979年、ソニーのウォークマン(小型音楽プレーヤー)が販売されたとき、マスコミの反応は芳しくなく、宣伝部や営業スタッフがそれを身につけ山手線を1日中ぐるぐる回るという作戦や、日曜日には若いスタッフにも製品を身につけさせ、街中を歩かせたのです。さらに影響力のある有名人にも製品を提供するなどして認知を高めていったそうです。こうした工夫された広告・宣伝活動で、発売1ヶ月で3000台ほどの売上から、翌月には初回生産3万台を全て売上げ、供給不足が半年間続くほどの人気となったのも、社会的証明をつかったものといえます。
誰も使ったことがないものは、誰も手に取ろうとしません。ですから、周りの人がいたるところで使っているのを見ると、周りが使っているなら自分も手に取ってみようと行動に移します。販売戦略として、この戦略は悪いことではもちろんないのですが、ひとりの消費者の立場からは、無意識で行動してしまうと、いらないものも買ってしまうかもしれません。そもそも人は騙されやすいものです。「本当にこれを買うのか」と、クリティカルシンキングが必要になります。
人間は不思議ですね。周りを見て、自分で深く考えずに判断してしまう。冷静に意識して行動することがどれだけ大事かということですね。
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脳は、合理的で、じっくり考えること(システム2)が苦手だから、出来るだけ自動的に判断する(システム1)方法を選んでしまいます。自分がじっくり考えようと思えば、脳がやっと機能していくわけです。ですから、思考することを忘れずに行動したいものです。
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いかがでしたか。人が間違った判断を何故かしてしまう“社会的証明”について、4つの具体的ケースをお話ししました。
いま、未来に向かってどう選択していくかを考えると、今までのように、自動的に判断するだけでは取り返しがつかないことも起きそうです。周りの人たちの行動を見て正しいかどうかでなく、自分事として物事に取り組む必要があります。
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今を生き抜くためには、奮い立たなければならない時には、立ち上がれる自分でありたいです。
まずは、自動思考に任せる自分から、広く事実を見極めて”自分はどう思っているのか”、”どう感じているのか”を意識して行動することに、舵を切っていくことが大事ですね。
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私も、ふっと自動思考に引っ張られることがあると思いますが、情報を鵜呑みにしない、自分はどうありたいのか、なぜそう思うのかと、自問自答することから始めようと思います。
あなたの人生を大切に生き抜くために、あなたも、わたしと一緒に取り組んでいきませんか。
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<引用文献:ロバート・B・チャルディーニ(2014) 『影響力の武器―なぜ人は動かされるのか』 訳者 社会行動研究会 株式会社 誠信書房>
<参考文献:厚生労働省「令和3年版(2021年)自殺対策白書」第2章より>(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsuhakusyo2021.html )
<引用文献:Gigazine( ギガジン オンラインマガジン 2022.3.19科学者が言っているとデタラメでもそれらしく感じてしまう「アインシュタイン効果」とは?>(https://gigazine.net/news/20220319-einstein-effect-trust-nonsense-scientists/ )><参考文献:ウォークマンーWikipedia (https://ja.m.wikipedia.org/wiki/>