“予期せぬ出来事”。あなたは「不運なこと」って思っていませんか?!
予期せぬ出来事って聞いたら、あなたはどんなことが起きたと思いますか?7億円の宝くじに当たったとか、世界一周のツアーに選ばれたとか、こういったことが起きたなら、「幸運」間違いなし、ワクワクしちゃいますね。でも残念ながら、予期せぬ出来事は、Welcomeとは言えないことが多そうですね。たとえば、突然いやな出来事が自分に舞い込んできたとか、自分を暗闇に落とす困った出来事など、「不運」なことって思ってしまいます。
そして、この予期せぬ出来事は、突然やってくるものです。
こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。
たとえば、この不確実な社会では、企業も経営の合理化から、IT化が始まり、Cha-GPTなどの生成AIが登場し進化し続けていますね。
ゆえに仕事の変化が速く、部署が統合されて仕事内容が変わる。またIT化が進んで今までやっていた仕事がDX化されて自分のやっている仕事が無くなりそうだなど、あなたにとっての予期せぬ出来事が起こりそうで、自分はどうすればいいのかと、不安になっている方も多いかもしれません。
じつは、「予期せぬ出来事を、意図的に幸運をもたらすものに変換するスキル」があるようです。今回は、これについてお話します。
生化学者のルイ・パスツールは「幸運は備えある者のみに訪れる」と語ったとされています。また、認知科学や経営学の研究では、予想外の事態に気づくか否かのカギを握るのは注意力、つまり「感度」であることが明らかになっているそうです。たしかに、感度が良ければ、幸運に気づくことができそうです。
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それは、ものの捉え方(見え方)の違いで、「幸運」にも「不運」にも世の中が変わって見えます。もしかすると、あなたの無自覚な先入観が幸運を遠ざけているのかもしれません。つまり、認知の歪みが、幸運を遠ざけているといえます。
イギリスの心理学者、リチャード・ワイズマンが興味ある実験をしていました。自分を「飛び切り運がいい」と思っている人(以下、Goodさん)と、「とびきり運が悪い」と思っている人(以下、Badさん)を探してきて、それぞれが世界(自分の置かれた状況)をどのように認識するかを調べたというのです。
実験の設定は、コーヒーショップです。店に入ってすぐの足元の位置に、5ポンド紙幣が置いてあります。店内にはサクラの客をいくつかのテーブルに配置し、注文カウンターのそばの席には、ビジネスパーソンを座らせています。
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Goodさん、Badさんそれぞれ同じ条件で実験をしました。
この実験でのGoodさんの行動は、“5ポンドに気がついて拾い、コーヒーを注文してビジネスパーソンの席の隣に座って、話しかけ会話をして仲良くなった。”
それに対してBadさんは、“5ポンドには気づかないまま、コーヒーを注文してビジネスパーソンの席の隣に座って、実験が終わるまで一言も話さなかった。”
実験の後に、Goodさん、Badさんそれぞれに「今日はどんな日ですか」と尋ねたら、Goodさんは、「5ポンドを拾い、ビジネスパーソンとも楽しく話せたラッキーな日です。」と答えました。一方Badさんは、「何の変哲もない朝です。」と答えました。
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いかがでしたか。まったく同じ状況を経験しても、彼らのものの捉え方(見え方)によって、結果がプラスにもマイナスにもなってしまいましたね。自分を「飛び切り運がいい」と思っているGoodさんは、予想外の事態に気づくから、運に恵まれやすいということになりそうです。
確かに、予期せぬ状況を難なく乗り越えていく人もいます。でも、Badさんには、そう簡単なことではないと思います。「乗り越えられる人だから、出来るってことでしょ!」とBadさんは悔しい気持ちになるかもしれません。私たちも、慣れ親しんだやり方や考え方を変えるのはどちらかと言えば苦手ですよね。
でも、だれでも、学習することで“ものの捉え方(見え方)”が身につくことができます。あきらめないでください。
Goodさんの行動を振り返ってみましょう。Goodさんは、「予期せぬ出来事は、人生では起こるもの」と認識しているから、目の前の出来事を日々注意深く観察する注意力を身につけたので、変化に気づき行動できた。だから、運を見逃さず、運に恵まれたということですね。
Goodさんのように「飛び切り運が良い」とまで行かなくても、人生では「偶然の/予期せぬ出来事は起こるものだ」と認識して、日々注意深く観察する注意力を身につけて、行動することは、私たちにもできそうです。
その前提は、「予期せぬ出来事は起こるもの」という耐性を持つことです。
そして「できるわけないよ」という自分の固定概念を柔軟にすることから始めましょう。 “思い込み”という固定概念が、あなたにとって一番手ごわい相手なのかもしれません。
いよいよ「予期せぬ出来事を、意図的に幸運をもたらすものに変換するスキル」に移りましょう。
これは、ジョン▪D・クランボルツ博士が、ハップンスタンス・ラーニング・セオリーで提唱したものです。私も日々、この5つのスキルを意識して行動しています。
●「予期せぬ出来事を、意図的に幸運をもたらすものに変換する5つのスキル」
- 好奇心
- 持続性
- 柔軟性
- 楽観性
- リスクテーキング
この5つのスキルをどう使っていくのか、3つのステップごとに説明していきましょう。3ステップで最初のステップ1が、最も大事だと思っています。
ステップ1.予期せぬ出来事の有無にかかわらず、日々の生活を幸運に変換するために5つのスキルを意識して活用する。
予期せぬ出来事がなくても、日々同じことが繰り返される仕事や、変化が少なくルーティン業務を淡々としているだけでは、幸運を遠ざけてしまいます。5つのスキルを鍛えましょう。
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予期せぬ出来事をキャリアアップの機会と捉えて、意欲を持って考えてみる。
●同じやり方で仕事をしてきたが、違うやり方があるのではないだろうか。
●AIをもっと理解するために、新しいことに挑戦してみよう。
●今までの経験の中で、興味あるものは何だったのだろうか。
<5つのスキルを使っていく!例
- 他にどんなものがあるか、好奇心を持って観察してみる。選択肢を広げてみる。
- 失敗してもあきらめずに、努力し続ける。
- 柔軟性をもって、周りの人の意見を取り入れる。
- チャレンジした結果、ポジティブな結果を生むと信じる力を忘れない。
- 誰もやったことがなくても恐れずに行動を起こす。
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このように5つのスキルを意識して行動していくと、新たな発見や気づきがいろいろと生まれ、思考が発達していきます。
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ステップ2.予期せぬ出来事が起こったら、起きていることを注意深く観察し、5つのスキルの一つひとつを吟味して潜在的な機会を探り糸口を見つける。
●予期せぬ出来事の渦中にあるなら、目先のことが気になり感情的になりそうですが、起きていることを注意深く観察して論理的に構造化してみる。5つのスキルに対して、ひとつずつチェックしていく。
もし、あなたが経理の仕事をしていたとします。会社が吸収合併されて、人員削減することになり、辞めなければならなくなったという予期せぬ出来事だったら。
<<あなたはどのようにこの危機を「幸運をもたらすもの」に変換しますか?
1.違った状況でも対応できそうな方法を柔軟に考えているか。➡経理の仕事を活かせそうな、数字を扱う仕事って、ほかにどんなものがあるだろうか?
2.他にどんなやり方があるかなと、周りの人の意見に好奇心を持って話を聴き、注意深く観察しているか。➡知り合いや周りの人に現状を話してアドバイスをもらって情報を集める。
3.誰もやったことがないことに対して行動に起こすことを恐れずに実行できるか。何があればできるか。➡最初から無理と思わず、必要と思う情報を集めていく。何があればできるかを突き止める。
4.チャレンジした結果、ポジティブな結果を生むという楽観性を信じる力を忘れていないか。➡経験のない仕事でも、諦めずに面接にトライする。
5.乗り越えられそうもないと思えることも、持続性をもって、努力し続ければ結果がでると信じるか。➡前向きにやり続ける。
ステップ3.予期せぬ出来事を乗り越えたら、その経験を役立てるための行動を起こす。
●予期せぬ出来事を乗り越えたら、それを自分の力にしていくために、5つのスキルをどのように活用して、乗り越えてきたかを振り返り、学びにつなげる。
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いかがでしたか。”幸運をもたらすもの”に変換する5つのスキルを どう鍛えていくかを3つのステップで解説しました。
大事なことは、あなたが“こんな仕事をしたい!” “これを実現したい”という意欲をもってやり続けることです。そして、「予期せぬ出来事は起こるもの」と認識して、注意深く感度をアップさせて乗り越えていくことで、幸運がもたらされると思います。
一日一日を丁寧に生きていく中で、あなたの鍛えた感度が、
「数ある出来事」の中から、
チャンスを見極めることでしょう。
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参考文献:<『運のいい人が幸運をつかむ前にやっていること: セレンディピティの科学』 クリスチャン・ブッシュ (著), 土方 奈美 (翻訳) 東洋経済新報社><『その幸運は偶然ではないんです!』 J.D.クランボルツ (著), A.S.レヴィン (著), 花田 光世 (翻訳), 大木 紀子 (翻訳), 宮地 夕紀子 (翻訳)><『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』 前野 隆司(著)講談社現代新書>