【“違いを尊重する”学びで、あなたが成長できる】と言われるワケ。
今は同じ会社で定年まで働くことは少なく、転職をするのが当たり前になってきました。新たな職場で、新たな人間関係を築き、協働して成果を出すことが期待されます。そこで大事になってくるのが、一人ひとりの多様な視点の違いを活かして、変化を乗り切る力です。
今回は、未来を生き抜くために、自分が成長できる “違いを尊重する”学びを提案しようと思います。
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こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。
さて、現在のような変化の激しい社会では、あなたが新たな会社で働く、新しい領域で働くということも、大いに考えられそうです。たとえば、あなたが新たな環境で働くとすれば、あなたの前には見知らぬ人たちがいるはずです。そこであなたが活躍するには、自分自身のキャリアに責任を持つために、あらゆる能力、スキル、コンピテンシー(行動特性)を開発・強化していく必要がありますね。
問題を協働して解決していく能力や、ものごとを俯瞰して自ら考え抜く力などを、鍛えておきたいです。
そんな中で、“違いを尊重する”学びの取り組みは、自らのキャリア発達を促進する方法として、期待できます。
“違いを尊重する”学びの必要性
約20年前から、企業は、ダイバーシティ・マネージメントに焦点を当て、経済に寄与するよう取り組み、 “個々を尊重する”、“多様性”などにフォーカスして、「一人ひとりの違いを活かす」ということを伝えてきました。しかし、日本の企業風土は、長い間一致団結を培ってきたわけで、従業員は、“違いを尊重する”ことについての本質は学んでいません。そもそも私たち日本人は、他者と「同じ」という意識が強く、「違い」については意識を向けてこなかったと言えます。
しかし、私たちを取り巻く世界を見てみると、収入、職業、学歴、出身、政治、家族、配偶者の有無など、それぞれ違っていますし、一人ひとりの価値観や興味も当然、違っているわけです。
自律的にキャリアを形成するには、多様で柔軟な思考力を身につけ、能力・スキル・コンピテンシーを高める必要があります。その学びの本質は、「他者を知ることであり、自分を知ること」です。それは、自分を鍛えることに繋がります。
“違いを尊重する”取り組みは、あなた自身を理解する機会であり、自己成長する機会になります。
“違いを尊重する”学びの目的
これからのD&Iの取り組みでは、 “従業員一人ひとりの違いを資産として捉える”ことが重要という考え方があります。
一人ひとりの人生経験から、それぞれが「自分のものの捉え方」を育ててきました。人生で得てきた多くの経験が、スキルや能力、コンピテンシー、そして価値観や興味を育て、それが資産になるのです。
つまり、個々の資産を融合させて、個々の力を強化しよう!という目的です。
一人ひとりの違いは、対話を通して理解し学び、相互依存的な関係が、その違いを大きな力に変えることができるのです。
たしかに相手との違いが尊重できると、初めて信頼が生まれ、心理的安全性が宿ります。そして、協働することで、あなたの能力が成長し、新たなキャリア・スキルが高まると考えられています。
どう学ぶか
ステレオタイプや思い込みが強い人は、自分のやり方が正しいと考えます。自分の価値観で他者を測るという“ものの捉え方”があると、成長しながら学び続ける能力は、制限されてしまいます。また、誰でも問題解決を迫られたら、人は自分の判断が逸脱してしまうのではないかと恐れを抱いてしまうことも多いはず。
わたしが主催するセルフエスティームの研修の中でも、小グループでいくつかの自分の経験を語るエクササイズがあります。参加者には、リラックスして話すようにと促しますが、始めは、話がギクシャクしたり、早く話を止めてしまったり、自分がどう見られてしまうか迷っていると、どうしても居心地の悪い空気を味わってしまいます。
しかし、セルフエスティームについて解説し「みんな違ってそれでよいのだ」ということが、徐々に理解できてくると、違いを尊重しながら互いに語り、話を聴くことで、安心感を抱くようになって、初めて互いに学びあうことができるようになります。
どう取り組むのか
◆“違いを尊重する”ことを学ぶ、3つのこと
- 自分とは違うと感じる人から学ぶこと
- 自分について学ぶこと
- 違いを持った人と、これまでとは違った協働の仕方を学ぶこと
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◆様々な人とのコミュニケーションを保つ要点は、2つ
大事なことは、まず、あなたの意識を変えること。
人のものの捉え方の背後に何があるかをとらえ、それに働きかけることができるように学びを深めていくのです。そして、自ら分かりあうために、努力を尽くそうとする意識が大切です。
1.「異なる視点で物事を見られる」ようになるには
人は、自分と類似した意見の持ち主に近づこうとする傾向があります。それは、自分の意見と異なる意見に接することで生じる不協和音の不快さを避けようとする傾向と、その相手との対人的葛藤を避けようという2種類の働きがあるからです。日本では、後者の方が多い傾向にあるようです。
ですから、違いが生みだす緊張感や不快感を表すよりも、気づかないふりをして無視したりする方が楽だと思っている人も多いように思います。
しかし、そこにはあなたの中に「私と合わない人だから、深入りしない方が良い」という無意識の思い込みがあるかもしれません。
もしかすると、自分が否定されるかもしれないと自分の防衛機制が働くとも考えられます。異なる視点で物事と向き合うには、セルフエスティームが安定していることが重要です。つまり、自分自身の良いところも悪いところも正しく評価できている状態が、セルフエスティームが安定していると言います。
じつはセルフエスティームが安定していると、自分の良いところも悪いところも受容でき、したがって相手の良いところも悪いところも受容できるようになります。つまり、ありのままの自分でいられるので、防衛する必要がないわけです。なにが正しいか間違っているかではなく、互いに考えを述べ、違いの意味を知ることに学びがあります。私たちは、どちらが正しいとか、上位だとかではないんです。一人ひとり価値ある存在であり、学びあえる関係性なのです。“違い”の裏側には、未知の気づきがあると思います。
大事なことは、相手の言葉や感情を受容していくことです。これは、相手の言葉や感情を批判したり、評価したりしないで、そのまま、ありのままに受けとめることを意味します。「そうなのか、あなたは~と思ってるんだ」「そうなのか、あなたは~と感じているだ」と、客観的に受け止めてみてください。そう、やさしく受け止めるだけです。
例えば、新メンバーとのミーティングで、仕事の進め方について違う意見が表れるかもしれません。自分の捉え方とまったく違う考えを持っている相手に対して、つい自分の考えが正しいと思いたくなりますね。でも、相手の人生経験の中で編み出した方法は、よりベターなものかもしれません。着眼点や方法論を交換しながら、互いに新たな能力が育まれる可能性もあるのです。
また、自分はこういう人間だと思っていたとしても、相手から聞いた自分のイメージが違っていたら、どうしてそのようなイメージを抱いたのかについて内省し、“自分は何者なのか”に気づく機会を得るわけです。
このような学びを重ねて、ありたい自分を発見し、そこへ、たどり着くためのガイドをみつける機会になるでしょう。
2.「人によってコミュニケーションの取り方は違う」と思えるようになるには
同じ会社でも、職場の文化や専門性によって、他者との深い関係性を作り、協働する能力を発揮する機会はますます増えています。
多様なものの見方や考え方、価値観などの違いは、職場に豊かさと深み、洞察をもたらします。そして、コミュニケーションは、最も複雑で難しいものと言えます。とくに、バックグラウンド、価値観、興味が自分とまったく違っている人達とは、もっとも難しいですね。そのためには、相手のタイプによってコミュニケーションの取り方を意識すると良いと思います。
MBTI、Discやコミュニケーションの4つのタイプなど性格志向特性のフレームは、そのような他者と一緒に働くときに、例えば相手がタスク志向か、プロセス志向かを掴むきっかけになると思います。相手との効果的なコミュニケーションは重要です。ポジティブな関係性を築くために、言語能力を向上させ、自らが行動を起こすことが特に大事になります。
◆“違いを尊重する”上で大事なことは、「傷つくことをいとわず、リスクをとり、違いを持った人たちに自ら働きかけ、輪に入れる勇気を持とう」とすることでもあります。
セルフエスティームが安定していると、自ら働きかけて、互い(違い)を尊重し、互いを受容して関係性を築くことが楽しくなります。互いのものの見方がいかに異なったとしても、ありのままの自分を変えずに学習プロセスに参加し続けるときに、最も安心していられます。
「違いを受け容れようとしない人」の未来は?!
“違いを尊重する”上で最大の難関は、相手の違いを受け容れようとしない、または違いに目を向けようともしない人です。
私たち日本人は、外見上大きな違いは見られない。でも、見えない違いを感じ取ってしまうことが問題なのです。
自分と他者の違いに対するステレオタイプや思い込みを正直かつ率直に探る作業には、つねに感情がつきまとうものです。
そして、話し方、話す内容、興味、関心、価値観、態度、所作など、今まで自分が生きてきた経験と違うだけで、感情が揺さぶられてしまいます。
職場でのパワーハラスメントが、マスコミでも話題になっています。これは自分が正しく、他者が間違っているとの思い込みから生みだされる。つまり違いを尊重できない人が、加害者となることが多いのだと思います。残念ながら、環境が生みだしてしまった人であり、自己防衛をせずにはいられない人なのかもしれません。このようなギスギスした人間関係では、プラスに物事が進行しない。むしろ、そのようなことが横行している会社は必ずや自滅してゆくように思います。
そうならないためにも、互いの“違いを尊重する”ことを学ぶ必要があるのです。学んでいくと、ジレンマと変化、複雑さとあいまいさを感じるでしょう。少しずつ受け容れていることを自覚できるようになります。そして柔軟な意識を持つようになり、ものごとに対する考え方が変化成長して、平常心をキープできるようになっていきます。
相手の価値観や興味の違いによって、自己発見が起きやすくなり、相手の人間性が分かれば、おのずと人間関係が機能しやすくなります。自己成長は、特別な学びでなく“違いを尊重して関係性を深める”ことで、自分の行動や言動を振り返り「自分は、どう成長したいのか」という内省が生みだされるのです。
一朝一夕にはたどり着かない学びですが、一歩ずつ他者との関係性が広がり、自分自身の能力も豊かになっていきます。”違いを尊重する”学びの一番の手強い相手は、家族かもしれませんね。少なくとも、私の場合はそうでしたよ。
一生を通して、成長していることを実感して毎日を過ごす。最高です!
一緒にやっていきませんか?
引用文献:<ダグラス・ティム・ホール(1996) 『邦訳:プロティアン・キャリア 生涯を通じて生き続けるキャリアーキャリアへの関係性アプローチ The career is dead – long live the career: A relational approach to careers』 亀田ブックサービス 2015年 尾川丈一、梶原誠、藤井博、宮内正臣 共訳>