今こそ、自分の適応力を伸ばす
こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。
コロナウィルスという厳しい状況の中で、学校はお休みに、家族の生活リズムが変化し、夫も妻もそして子供たちも、苛立ちや疲弊感を感じていると思います。それだけでなく、多くのビジネスパーソンが、在宅ワークやオンラインでの会議など、新しい働き方に取り組み出しています。そして、この流れはさらに加速していく予感を感じます。不確実な世の中を 変幻自在に生き抜いていくために、適応力を伸ばすのは、いまです。
いま、疲れを感じていませんか?
今は誰も経験したことがない、そして終わりが見えない状況だから、疲れを感じてしまうのです。コロナに立ち向かうなんて自分には対処できそうにないと思っている状態は、自己効力感も低くなっています。自分で考えて行動するより、周りの意見や行動に合わせて、自分も他の人と同じ行動をとっていると安心できるという、同調行動と呼ばれる心理現象になっています。しかし、それでは自分の気持ちに蓋をしているだけなので、恐れや不安な気持ちは無くなりません。いまこそ、自分の未来のために、環境への適応力を育てる必要があります。
適応力に必要なこと
辞書に、適応力とは「環境に従い、行動や考え方をうまく切り替える能力」とあります。言い換えれば、適応力の高い人は、異なった価値観にも対応できる思考力と、どのような状況でも冷静に対応できる行動力があると言えそうです。
例えば、仕事でお互いの主張だけを言い合っても、なにも建設的な答えは導けず互いに不満が残るだけです。また、相手の主張に合わせて、自分は我慢しているだけだとすれば、これらは、適応力がない状態と言えますね。適応力を向上させるには、まず「自分から他者に働きかけ、情報を集め、互いの価値観や考え方をフランクに話せる関係性を作り出す能力」が求められます。何故なら、自分が適応できているかどうかを知るには、他者からの率直なフィードバックが欠かせません。適応できていない自分に気づいたら、他者から「何が足りないのか、どこがずれているのか」をフィードバックしてもらわなければ、学ぶことはできないからです。
他者からフィードバックを得るには
しかし仕事上では、異動したばかりの組織や、交渉相手といった関係性が築けていない場合も、大いに考えられますね。そんな環境であってもフランクに話せる関係性を作り出し、他者からのフィードバックを得るには、互いに信頼できる、つまりポジティブな関係性を築くことで可能になります。
人間は、他者から与えてほしいと思っていることが、5つある!
じつは、人間は誰でも、「他者から与えてほしいと思っていることが5つある」と言われています。それは、「1.受け入れてほしい 2.認めてほしい 3.感謝されたい 4.褒められたい 5.同意してほしい」という言葉(行動)です。確かに、相手から感謝されたり認めてもらえたら、自分のセルフエスティーム(自己肯定感)は高まりますし、相手に好感をもつと考えられます。であるなら逆に「相手を受け入れ、相手を認め、相手に感謝し、相手の良いところを褒め、相手の意見で同意できることは同意する」という行動は、相手と信頼関係を築くための橋渡し(ラポール)をしてくれると言えます。
適応力は、互いのセルフエスティームを高めて機能する
セルフエスティームは、「自分の価値や能力について、自分自身は価値がある、有能な存在であると感じること、または態度」のことを言います。日々の対人関係で、5つの言葉(行動)があなたから自然に表現できれば、相手のセルフエスティームは高まります。そして表現したあなた自身のセルフエスティームも同時に高まります。これによって関係性が親密になり、お互いに話をポジティブに聴く準備が生まれます。ここでは、5つの内1~3をご紹介します。この3つは、「よく知ってる」と思うかもしれませんが、どんな心構えで表現するかで、全く変わります。適応力を向上する上で、これらは、いつでもどこでも、あなた自身が行動することから始まります。そしてあなたの態度、姿勢、に反映されます。
1.相手を受け入れる
受容とは、「相手をそのまま否定も肯定もせず評価も加えず、相手をありのまま受け入れる」ということです。例えば、知らん顔は、相手に「あなたは存在していない」ことを伝え、目が合っても無表情であれば「あなたに興味がない」ことを伝えています。「あなたをありのまま受け入れている」「あなたと私は仲間ですよ」と伝えるために、「アイコンタクトして、こころからほほ笑む」ことで表現します。
「ほほ笑む」ことの関連情報として、Brown & Levinson (1987)は、人間は、「自分の行動の自由を制限されたくない(ネガティブ・ポライトネス)」という欲求と、「自分の良いところを認めてもらいたい,仲間に入れてもらいたい(ポジティブ・ポライトネス)」という欲求があるというポライトネス理論を提唱しました。それは、相手がもっている欲求に配慮しつつ,自分の言いたいことを伝える方略です。 相手に「あなたとわたしは仲間ですよ」というメッセージが伝わるような言い方で伝えるということです。無理に親しげなトーンで話す必要は必ずしもありません。実証的な検討はなされていないものの,福田 (2013)*は「ほほ笑み」がポジティブ・ポライトネスの効果を増強する可能性を指摘しています (p.196)。*福田一雄(2013).対人関係の言語学―――ポライトネスからの眺め――― 開拓社
2.相手を認める
認めることについて考えましょう。1で話しましたが、知らん顔は「あなたは存在していない」ことを伝え、目が合っても無表情であれば「あなたに興味がない」ことを伝えています。認めるとは、まさに「あなたは大事な存在である」と伝えることです。どう表現するかと言えば、「あいさつする」です。形骸化したあいさつではありません。アイコンタクト&ほほ笑みをもち、あなたに会えてうれしいという思いを込めて「あなたを大事な存在として認識している」ことをあいさつを通して伝えるのです。
3.相手に感謝する
感謝は、喜びに満ち溢れる心の状態を言います。自分の心にゆとりがなければ、自分のことに気持ちが向くでしょう。「やってもらって当たり前」「仕事が遅いんだから」など、そんな自分勝手なことを言っているあなたの心は、ネガティブサイクルにハマっています。感謝する気持ちは、自分の心が穏やかでポジティブな「ものの捉え方」から生まれます。そして、アイコンタクト&ほほ笑みをもって、自分のために行動を起こしてくれた相手に心からの尊敬を込めて「ありがとう」を伝えます。伝えた自分も豊かな気持ちになっていることに気づくはずです。
行動を起こそう
適応力を向上させるには、まず「自分から他者に働きかけ、情報を集め、互いの価値観や考え方をフランクに話せる関係性を作り出す能力」が求められます。 その関係性を作り出す最初のステップとして、3つの行動を起こしてください。 相手を受容し、認め、尊敬を込めて感謝するでしたね。自分らしくどのように表現していけばよいか考えてください。この行動から、互いの価値観や考え方が話せる関係性がうまれていき、互いに学びあうことで、適応力が変化成長していきます。そして同時に、ご自身のセルフエスティームも高まることでしょう。
私たちは、厳しい環境の中にいます。自分の恐れや不安がることを止めましょう。そして、私たちのためにコロナウィルスに立ち向かっている人々に、心からの尊敬を込めて「ありがとう」と声をかけていきましょう。行動した自分の中に、いまを乗り切るエネルギーが湧いてくるのを感じるはずです。そう、自己効力感が高まるのです。
コロナウィルスに負けずに、共に乗り切っていきましょう。
ダーウィン(英国の自然科学者、『種の起源』著者/1809~1882)
生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。