「やらなければならないことが多すぎて、いつも中途半端」と罪悪感を抱いてしまう。それは、あなたが「自分の役割」と無意識に思考しているからです。

キャリアカウンセリングをすると多くの相談者が、「やらなければならないことが多すぎて、いつも中途半端、自分の時間なんてありません。このまま、歳を取っていくのかと思うと焦ってしまいます。」と、話します。

今回は、この課題について考察しようと思います。           

生きるために必要な最低限の「やること」は、誰も共通していますよね。簡単に言えば、体力をキープするために食事をとる、衣服を着る。そして、十分な睡眠をとる。つまり、衣食住です。そして、それらを手に入れるために働いています。

ところが、「やること」って、日々いろいろとありますね。そして、「やらなければならないこと」も増えています。

やりたいことや、やらなければならないことが多すぎて、限られた時間の中でどう選択すれば良いのか考える暇もなく、生きているといえそうです。

こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。

役割が多い人ほど、自分で自分を追い込み、罪悪感をもってしまうネガティブな連鎖を起こします。それには2つの要因があります。役割と時間の関係です。

「なんで思うようにできないの!」と、愚痴を言っても出来ないことはできないのです。だって、わたしたちは誰も、一日24時間の枠の中で生きているのですから。より自分らしい人生を生きるために、この2つの視点から問題を考えます。

たしかに、人生にはいろいろな役割がある

アメリカの心理学者であるドナルド・スーパーは、”ライフキャリア・レインボー”という考え方の中で、「人はいろいろな役割を持って生きていく」と話しています。でも、人によって役割の多い人もいれば、少ない人もいますね。

彼が考えたライフキャリア*とは、仕事に限らず、“人生全体で果たす役割は、娘・息子の役割・学生(学ぶ人)の役割・職業人の役割・配偶者の役割・家事を行う役割・の役割・余暇を楽しむ役割・市民の役割」の8つである”。そして、それらの役割は、ひとり一人の価値観や関心によって、彩られていくと話しています。人生で多様な役割を担うことで、ヒトはキャリア形成をすると考えたのです。

わたしたちは、「おぎゃ~」と泣きながら、この世に誕生しますが、じつは生まれたときから「役割」をもっています。それは、子どもの役割をもって生まれるのです。

成人するまでは、子ども(娘や息子)の役割と言う認識はないかもしれません。しかし、人生の後半になるとあなたの親が存命で年老いていれば、あなたは娘や息子として子どもの役割を担うことになります。

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ヒトは、役割ごとに“役割の顔”、つまりアイデンティティ*を持つ。

あなたが、社会人になって一人暮らしを始めたら、「娘・息子、職業人、家事を行う、余暇を楽しむ」の4つの役割を持つでしょう。

あなたは、それぞれの役割にふさわしいと思う行動を自分で選んで演じているはずです。その役割の一つひとつは、あなたの考えや価値観が反映して演じているでしょう。別の言葉で表現すると、4つの顔<アイデンティティ>があると言えます。

自分に合った役割バランスを見つける。

役割の多さに振り回されているから、達成感がないのです。多くの役割をひとりで担っているのかもしれません。たとえば8つの役割を担うことは、時間的にも肉体的にもタフなことだと思います。時間との折り合いが、思うように回らないとジレンマが生まれます。

「すべて、私の役割だ。」と自動的に思考していると、自滅します。

あなたは、「やらなければならないことは、私の役割」と自動的に思考しているかもしれません。でもそれは、自分のキャパシティも考えずに、それを抱え込んでしまうことで起こります。

そして、自分が思っているレベルの高さまでに出来なかったと苛立たったり、自分ばかり貧乏くじを引いていると怒りの感情が湧いてくることにつながります。

わたしたちは万能ではありません。ですから、 “時間と折り合いをつける”方法を考えましょう。

何をやるかを決めるには、まず、「やらないことを見つけ出す」

人生時間は有限です。一日24時間として、寝る時間が7時間くらいは必要です。残りは17時間。

自分らしく生きていると実感できるように、あなたの役割をあなたが決めます。それでも、自分の大事だと思う気持ちとやれる時間とが一致しないかもしれません。逆に、やりたくないのに、やらなければならないことに時間を割かれてしまうこともあるでしょう。

あなたらしく人生を生きるための判断基準を作ります。

あなたが担っている役割の中味を区分しましょう。いろいろな基準のつけ方があると思いますが、判断基準としては、人生の満足度と人生の重要度で考えてみましょう。

人生の中で年齢とともに、その重要度や満足度は変化します。ですから、今のあなたにとっての満足度・重要度を吟味してください。

下記のように4つに区分します。

8つの役割の中で、あなたが今、担っている役割の数で、具体的にやっていることをそれぞれ4区分に、リスト化していきます。

具体的に4つの区分に書き分けたら、出来上がったリストを見直しましょう。

4つの区分の割合はどうだったでしょうか?偏りはありましたか。

まず、4.重要度も満足度も共に低い役割に該当したものは、あなたのやらないこととしてリストから外します。それらに費やしている時間を自分のやりたいと思うことに振り替えます。あなたの判断基準に合った時間の使い方にしていくのです。自分で内容と時間との折り合いをつけていきます。

もしあなたの役割が、3.重要度が高く/満足度が低い役割ばかりだったら、あなたは自己犠牲を払ってあなたの人生をただ生きているだけと感じているのではありませんか。3.重要度が高く/満足度が低い役割は、あなたでなければできないことですか?

いくら重要度が高いと言っても、あなたの人生です。重要度の高い役割の内容を再吟味して、あなたにとって満足度の高い役割を増やしましょう。あなたの「やりたいこと」を増やします。重要度の高い役割を疎かにせよと言っているわけではありません。優先順位をつけて、低いものを重要度から外します。あなたの負担を少なくする方法を見つけ出すのです。

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あなた一人で担うのでなく、周りの人からの助けを借りましょう。

誰かに役割を担ってもらうことは、その誰かとあなたが生きている実感を分かち合うことでもあります。あなたの「ありがとう」の言葉は、相手への感謝の気持ちを伝え、相手を尊重する気持ちを伝えます。

一日一日を大切に生きるために、あなたの思いを言葉にする勇気をもちましょう。そして、誰かの思いを聴いて、支えあって生きていくことに人生の満足があると思えてなりません。

あなたの人生を大切に生きていきましょう。

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注>ライフキャリア*:「娘・息子の役割・学生(学ぶ人)の役割・職業人の役割・配偶者の役割・家事を行う役割・の役割・余暇を楽しむ役割・市民の役割」:

具体的なイメージとして、たとえば、子どもとして親との関係があります。職業人のあなたは、働くことを学び、プロフェッショナルとして仕事をします。家事を行うあなたは、食事を作って掃除や洗濯など個人生活を営みます。余暇を楽しむあなたは、友人と語らったり遊んだり、またはあなたの好きな趣味を楽しむ時間を持つわけです。また、あなたは働き続けるために専門知識の取得を考え、大学や大学院で学ぶのはもちろん、専門能力を磨き学習することもあります。結婚して家庭を築く場合は、配偶者と家庭生活を営む上で、それぞれが役割を分担する意識をもち協力していきます。親として自分たちの子どもを育成する責任を互いにもち育てていきます。そして地域との関係を築くには、市民として個人または家族の生活を安心できる場にするために活動します。

アイデンティティ*は、個人が自己の持つ特性や属性、価値観、信念、そして所属するグループなどによって形成されます。そして、このアイデンティティには、個人が自分自身の認識や自己表現を形成するうえで重要な役割があります。