「将来を自分がどうしたいのか分からない」というあなたへ。それは、あなたが「自分の気持ち」を分かっていないから。

日々環境が変化している今を生きていると、目の前にある仕事を片づけて一日が終わるという感じかもしれません。毎日ルーティンをこなしていくだけでも、一日は終わりまた次の日がやってくるわけです。

仕事を続けていく上では、かえって自分の気持ちを考えずに、サクサクと仕事ができたほうが効率的と言えるのかもしれませんが・・・。

いま、自分の気持ちを考えずに生きている人は、4人に1人と言われているようです。でも、自分の人生を生きていくなら、自分の気持ちを大切に生きたいものです。

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こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。 

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たしかに、社会環境が変わり、仕事や家族環境も変化していますね。このような厳しい世の中だから、仕事や家族を第一に考えて働くことに追われていると、ふと「なんだか生きづらい、でもどうしたらいいのだろう?」という思いが湧きあがってくることがあります。

いつも周りに動かされていると、「自分の気持ち」が生まれる機会が無くなってしまいます。でも、ぼんやりした感情は、かならずあなたの心の中に残っているのです。

自分の気持ちを考えずに生きている人― その①

キャリアカウンセリングの相談者の中に、「自分の周りで数々起こる出来事で――これもしなければならない、あれもやらないといけない、仕事も責任があるし、など――ひたすら走り続けてきた。50代になって、ふと自分の将来をどうしたらよいか分からない」という相談が多くなりました。相談者には、不安な感情が内在しているのですが、自分の気持ちを表すことに、戸惑いを感じているように見えます。相談者の状況は多く語られるのですが、自分の気持ちについて語ることは少ないのです。

自分のことを後回しにしてきたから、自分の気持ちを考えてこれなかったことが、原因ではないかと思います。自分と向き合い、自分の思いを書き出してみる、またはカウンセラーの問いかけに応えることで、モヤモヤが何だったのかを掘り下げることで徐々に見えてきます。

自分を見つめるということは、その中にある感情を「言語化する」ことです。「モヤモヤした」というぼんやりした感情を言語化するのです。そうすることで「自分の気持ち」に名前をつけます。それで初めて、自分の気持ちが認識できるようになります。

「気持ち」は言葉で自覚しないと認識しづらいもの。

「気持ち」を生み出す機能とは、たとえば、通勤電車でギュウギュウに詰め込まれて、息ができない経験ってあるのでは? 最近は携帯に夢中で、他人のことに気づかない人も増えていますね。背中がカバンで押されて「痛い!」と感じたことって、あなたもありますよね。その「痛い!」が、混んだ電車で繰り返されると、「ラッシュの電車は、いやだ!」と、乗りたくない気持ちが生まれてきます。この気持ちの奥には「精いっぱい頑張っている自分を押しつぶす恐ろしいもの」と映っているのかもしれません。このように痛い・不愉快と感じた経験が積み重なると、記憶として定着して「気持ち」として自覚できるようになります。 

自分の気持ちが生まれる仕組みは、感情の言語化なのです。

脳内科医の加藤先生によると、感情を司る脳の機能は、自分の内側と外側それぞれに機能が分かれており、自分の外を見る機能は、右脳の役割で、外の情報を受け取って他者の気持ちを察します。自分の内側を見る機能は、左脳の役割で、自分の気持ちを生成するそうです。

左脳の役割である自分の感情が弱い人ほど、右脳の役割の他者感情が発達しているという傾向になるようです。

つまり、自分のことが分からない人ほど、他人のことを察する力が強くなるということは、自分に対する認識が弱いということ。自分に対して自信も持てないということになります。したがって他者の反応で物事を判断する癖がついていると言えるそうです。

なぜ、自分の気持ちが分からないのか

生まれてすぐは、脳がまだ育っていないので、人から教わりながら、または周りの人たちとの感情表現を見ることで「気持ちの言語化」を学んでいくのだそうです。たしかに、幼児の持っているおもちゃの前で、大人が両手を広げて「これ、ちょうだい!」と言うと、ちょっと戸惑いながら、大人に渡すことができるようになります。この言葉とアクションで、幼児は何をしたら良いのかを察するわけです。

そして、大人がおもちゃを受け取る時に、お辞儀をして「ありがとう」と言えば、幼児は、何かをもらってうれしい時は、お辞儀をして「ありがとう」というのだと学んでいくのでしょう。

いろんなシチュエーションで、どのように感じ、どう行動し、どうコミュニケーションをとるのかを 脳の引き出しに増やしていくわけです。

自分の気持ちを考えずに生きている人―その②

小さいころから誰かに「ああしなさい、こうしなさい」と言われて行動してきた人は、自発的に何かするのは苦手と言う人もいます。指示されてきたために、自分の中に「こうしたい」というはっきりした気持ちが生まれにくいので、他者から「いいと思うよ」と言って背中を押してもらわないと行動に移せないのです。つまり誰かに背中を押してもらいたがる人は「自分で先々のことを予測するのが苦手」ということが言えそうです。行動計画を立てたり、先々を予測して行動する習慣がありません。だから、自分の感覚に自信を持ちにくいし、無意識に誰かの判断にゆだねたくなってしまいます。

つまり、小さい時から、自分の気持ちが分からないから行動できないという、ネガティブ・ループが回ってしまうわけですね。 

振り返ると、私も小さい時は、指示されて行動する子供でした。一人っ子と言うこともあり、ほかに比較できる親子の姿を見ることがなかったので、母と私との関係性が当たり前だと思っていました。

自分の中では、いつもモヤモヤした感情があったのを覚えています。でも、自分から行動するなんてことは、考えてもみませんでした。

しかし、幼くして父が突然死去したため、生活が激変し、結果的に私は母から解放されることになったのです。急に自由になったので、自分がどうしたいのか、すぐには考えが浮かびませんでした。母からの解放によって、こころが軽くなったのですが、幾ばくかの空虚感もあったように記憶しています。この新しい関係性によって、自分で考える癖がついたわけですから、いまでは母に感謝しています。

自分らしく生きるには

ところで、自分らしく生きるって、そう簡単には見つけられなそうです。だから、自分らしく生きるってことは、自分は何が好きで、どうしたいのかを見つけていく旅だ”と思えば、気は楽になります。自分の思った通りに行動しても、失敗もするし思い通りにならないことも多いけれど、その経験の中から自分らしさが分かるという「おまけ」がついてきます。

私も「たくさんのおまけ」を受けとりましたよ。

自分の“ものの捉え方”を鍛えていけば、自分の気持ちを考えて生きる人になります。

ヒトにはそれぞれ「自分のものの捉え方」というものがあります。主体的に行動して経験を増やしていくと、だんだん自分らしさが見えてきます。経験の中で、自分が「私はイケてるじゃない!」と思えることもあれば、逆に「こんな私は情けない!」と思えることもあるわけです。

「私はイケてるじゃない!」と思えると、うれしい気持ちになるし自信も湧いてくるでしょう。「こんな私は情けない!」と思えば、悲しいとか受け入れられないという気持ちになりますね。でも、自分にとって良いことも受け入れられないことも、すべてが自分だということなんです。その中にあなたらしさがあって、そこにあなたの気持ちがあります。

いろいろな人がいるから、自分らしさを見つけられます。いろいろな経験を通して、自分の気持ちが見えてきます。どんな時にうれしくて、何に価値を置いているのか、どんな時に怒りを覚えるのかその感情の中に、あなたの“ものの捉え方”があります。そこに、あなたが将来を選択していくための価値基準が芽生えています。

ヒトは、“出来事+感情=結果” という式で生きています。

出来事とは、人生で経験をするすべての出来事です。その出来事をあなたが当事者として経験した時、そこであなたの感情が動きます。その感情の捉え方しだいで、良い結果にも悪い結果にもなっていきます。

自分の気持ちを育成するのに大事なこと

子供のころは、誰でも「自分の気持ち」にうとく、大人になる過程で少しずつ育っていきます。子供のころから、「自分の気持ちに一致した行動をとる」という経験が多いと、自分の気持ちが明確になりやすいと言われていますし、セルフエスティームも高まります。

“脳が発達するから、気持ちと一致する行動がとれる“というだけでなく、”気持ちと一致した行動がとれたから、脳が発達する“という両方が必要だということです。

でも、自分の気持ちと一致した行動ができない場合もありますね。会社の人間関係で、収まりの良い行動をとってしまったり、強い言葉の人に、すぐ同調してしまうこともあります。これは、脳の自動化といって、習慣的になった行動は、合理的に脳が判断してしまうからです。

自分の気持ちと一致した行動にするための対処法

自分の気持ちと一致できない行動をしたときや、後から思い出してモヤモヤした気分になったり、悔しい気持ちが湧いてきたら、小さなノートに(今ならスマホのメモ)、頭の中にある思いを、とにかく湧いた順に書き込んでいきます。そして、あとから客観的に読み返してみると「自分の気持ち」を知るヒントがその書き込みの中にありますよ。

そのノートを客観的に読み返すことで、自分がその時に何をしたかったのか、何を本当は言いたかったのかという「自分の気持ち」が分かります。その自分の気持ちにあった行動を次回から取るようにしていくと、こころも軽やかになりますよ。

また、他者からのフィードバックは、耳が痛いフィードバックもありますね。でも、他者からのフィードバックは、自己理解が深まり、自分の感情を高めることにつながります。よほど意地悪い人でない限り、誰しも相手にプラスになるために言っています。「何々しないように」とか「何々できないとダメだよ」と言われた場合、ネガティブに受け取ってしまいがちです。でも、ポジティブ表現に「何々するように」とか「何々できるように」と言い換えて理解すれば前向きに行動できます。他者からのフィードバックをポジティブに理解し行動していくことで、新たな経験をする機会になり、その新たな行動で、自分の気持ちがさらに明確になっていくと思います。

これらは、私も実践済みの方法です。トライしてみてください。

自分の気持ちは、日々動きますね。その中で、自分がやり続けたいこと、やっていて楽しいことを大切に。

人生が豊かになること、自分の人生を生きているという実感をもって、あなたの人生を思いっきり生きましょうね。

<参考文献:『感情脳の鍛え方』 著者 加藤俊徳 株式会社すばる舎 2021.06>