不確実な今、「不安」を味方につける方法があります。

いつ頃からでしょうか、不確実とか不確実性などという言葉が、よく使われるようになったのは・・・。「不確実性」という言葉は、何が起こるか分からないという、将来に対して不安な気持ちにさせる言葉ように思います。

こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。 

この「不確実性」という言葉は1978年に、経済学の巨人と証されるハーバード大学名誉教授、ジョン・ケネス・ガルブレイスの著書「The age of uncertainty」を「不確実性の時代」と訳したことに起因しているそうです。

ガルブレイス氏は著書の中で「過去200年の経済学の歴史においては考えられない、“不確実性の時代が始まった”」とこの時代を定義しています。

いまから46年前の1978年の日本では、サンシャイン60が開館し、成田国際空港が開港、ディスコブームなど、景気が高まって社会はある意味浮かれている時期だったように思います。もっと豊かに、もっと幸せな生活を求めて、人々は、がむしゃらに働いていました。その後1990年あたりに突然、バブル崩壊が来ました。そして、「不確実性」という言葉が、日本の社会に広がっていったと思います。

不確実性という言葉は、「不安」を増幅させる

いま私たちは、不確実性という言葉を聞いているだけで、いまの生活が悪いほうに変化するのではないかと「不安」に感じてモヤモヤとした感情が湧いてくるように思います。自分自身で具体的にその実態を確認したわけでもないのに・・・・。

不安は、独り歩きする・・・

「不安」は、生きるために必要な感情です。でも、それが行き過ぎると何でもない出来事も、すべて心配事に引き寄せてしまいます。家族のことや、仕事のこと、将来のことなど・・・、その出来事を「不安」と結びつけることで、いっそう辛いものにして、自分の未来をネガティブな方向に導いてしまいます。

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でも、心配していることの9割は、実際には起こらない

ペンシルバニア大学のボルコヴェックらの研究によると、心配事の79%は実際には起こらず、しかも、残りの21%のうち、16%の出来事は、事前に準備をしていれば対処が可能。つまり、心配事が現実化するのは、たった5%程度という結果を導き出したという調査結果が、複数あるようです。

たとえば、仕事のトラブルで、取引がダメになるのじゃないかと不安に感じて、いろいろと打開策をめぐらしてクタクタになったけれど、結局、翌日には問題は解決できて事なきを得たなど、そういった経験も一つ二つはあったのではないでしょうか。

不安を感じるのは、守りたいものがあるから

自分一人、何とか生活ができればよいという人よりも、いままで築いてきたお金や地位など、成功して失うものが増えるほど、不安を感じやすくなるものです。不安感情は、満たされているほど、守りたいものがあるほど、大きくなるように思います。

不安を感じるのは、余裕や時間がある証拠とも言えます。経験を積むことで物事の処理能力が上がったことで時間ができ、いろいろ余計なことを考えやすくなったりします。たとえば、退職や子離れなどで時間に余裕ができた結果、自分自身の将来について、じっくり掘り下げてしまい、不安を増幅させてしまうこともありますね。

不安やストレスを感じることは、身を守るための防衛機制と理解してください。生きていく上では、とても大切なことです。もし、不安を感じなかったら、リスクに対して準備をしないだろうし、生き残れない可能性は高くなるでしょう。

ある意味、私たちは、不安を乗り越えるたびに、自分を進化・成長させているのです。自己成長するために「不安は必要なこと」と捉え直せます。

不安は人の成長のために大事なのであれば、不安とうまくつきあう方法を手に入れればよいわけです。不安感情とどのようにつきあっていけばよいか、考えてみましょう。

心配事から生まれる「不安に対する思考パターン

ヒトが心配事をネガティブに認知してしまう“不安に対する思考のパターン”は、出来事の受け止め方が、自身の認知バイアスによって歪められてしまい、自信のない、受け入れられないネガティブな結論をだしてしまうのです。

あなた自身のものの捉え方が不安を呼んでいます。あなたの不安の裏には、ありたいと願っている自分の思いがあるからなのです。だから、成功したい、好かれたい、幸せでいたい、認められたいという強い思いがそこにあります。

不安は、あなたのありたい姿を教えてくれるあなたの味方です。あなたがありたいと願っている姿が、そのパターンに表れているのです。

あなたの不安の思考パターンは、下記の中から選ぶとすると、どれになりそうですか。

  • 惨事を誇張する:最悪の可能性を想像する。「このプレゼンでちょっとでもミスをしたら、私は首にちがいない」
  • 人の心を推測する:他人がどう思うかを想像する。「彼は私を無視した。もう嫌われてしまったに違いない。私を軽く見ているのだ」
  • 未来を予測する:今後の展開を根拠なく想像する。「新しいチームの中で、経験がないのは私だけだ、きっと私を外すだろう」
  • 白か黒かで考える:2つの可能性しか考えない。「ホームランか、三振か、二つに一つしかない」「成功しなかったら、もう終わりだ」
  • 一般化しすぎる:たった一つの良くない出来事があると、世の中すべてがこんなものだと考える。「デートに誘ってうまくいったためしがない。誰も見向きもしてくれない。もう生涯、孤独で寂しい人生を送るのだ。」

このような5つの思考のパターンによって、不安感情があなたの脳に影響を与え、ポジティブな思考と行動を阻害しようとします。不安の思考のパターンを自分でコントロールして、あなたの心の声をポジティブな内省へと導けるようにします。

“人の心を推測する”を例にとってみましょう

たとえば、あなたの思考パターンが、“人の心を推測する“だった場合;他人がどう思うかを想像する。「彼は私を無視した。もう嫌われてしまったに違いない。私を軽く見ているのだ」と思いがちということでした。

あなたは事実がどうなのかを確認しないで、あなたの勝手な思い込み(思考の癖)で、悲観的な結論を出してしまう傾向があります。つまり、ひとり相撲をとって関係を悪化させているのです。

この傾向は、誰からも嫌われたくない⇔好かれたいと思っている、あなたのものの捉え方がそうさせています。「誰からも好かれる」なんてありえないです。自分の思い込みをはっきりさせるために事実を確認する、つまり相手に訊いてみるという方法もあります。でも、ちょっと勇気がいるかもしれません。そこで、不安に打ち勝つ対処法を次に紹介します。

あなたの”不安の思考パターン”に対処する、5つのアプローチを紹介します

あなたが陥りやすい”不安の思考パターン”はどれでしたか?それは、あなたの思考の癖によって生まれたものと言えます。過去においても同じような思考パターンを使っていたのではありませんか。自分の思考の癖を覚えてコントロールできるようにしていきましょう。

1.出来事と自分の”不安の思考パターン”を客観視する

あなたが、“人の心を推測する“思考パターンになっていると気づいたら、「また、勝手な思い込みをしているかも!」と、自分に語り掛けます。そして、別の仮説を複数考えます。

たとえば、「相手は考え事をしていたのかもしれない。」「具合が悪かったのかもしれない。」「上司に何か言われたのかもしれない。」と、客観的に捉え直してみるのです。リフレーミングすることは、客観的に物事を捉える力をつけてくれるでしょう。。

2.自分の心配事を書き出して、その書き出した心配事に対して自分で自分にアドバイスする

自分の心配事を書き出します。つまり心の声を言語化します。書き出したら、それを第三者からの相談事だと意識を変えて、その相談に対するアドバイスを自分で考えて書き出します。不思議なことに、客観的に心配事を俯瞰できると、適切な思考が戻ってきますよ。

3.不安をシェアする。

心配事は、心が許せる仲間に共有するのも良いです。キャリアカウンセラーにキャリアカウンセリングを受けるのも有効でしょう。壁打ち相手の存在がいることは、心配事を自身で言語化できる機会になり、自分をより理解することができます。不安を客観視できて、不安の本質が明確になります。その結果自分は、どうしたいのか、どんな自分になりたいのかが見えてくるでしょう。

4.適度な運動をする。

無理のない範囲の運動は、気分をポジティブな方向に導いてくれます。散歩は、気持ちをリラックスさせてくれる良い運動と言えます。体を動かすことは、身体共にリフレッシュしますが、それだけでなく脳のリフレッシュにも良いです。ネガティブな思考も、ポジティブな気持ちで爽やかな環境にいれば、不安に感じた出来事も客観的に理解できるようになりますね。

5.思考を止める趣味がある

夢中になる趣味があると、不安も消えてゆくものです。夢中になるということは、無我夢中ということです。懸命に取り組む何かをもつ。それは、あなたの気分を“いつもどんより雲が浮いている状態”から、“カラッとした太陽いっぱいの天気状態”にさせてくれます。趣味に没頭して、達成感を味わうことで心が軽くなり、いままでの不安が小さなものに感じられてきます。そして、「なんとかなる!」と思えるようになります。

人それぞれの不安があります。不安はなくならない。だから、不安の捉え方をリフレーミングして、自己成長の糧にしちゃいましょう。けっこう私たちは、たくましいのです。やってのける力があるものです。

不安を味方に。人間力がパワーアップしますよ。

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参考文献:<『いやな気分よ さようなら』コンパクト版 デビット・D・バーンズ著 星和書店 2017><『思考の罠からどう抜け出すか 不安を適切にコントロールする5つのヒント』 サビーナ・ナワズ著 ハーバードビジネスレビュー>