あなたのセルフエスティームを骨太にする方法。必読!

現在のように、生きづらさを訴える人が多くなってくると、セルフエスティームの重要度が一段と高まるようです。セルフエスティームは、社会環境の変化と密接に関係しているのです。

このようなストレスフルな環境に長期にさらされると、どんなにセルフエスティームの高い人でも、将来への不安や職場環境の変化から、セルフエスティームが低くなる可能性が考えられます。この辛い状態から早く抜け出したいと考えるのは当然のことだと思います。

こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。 

セルフエスティームは、“自尊感情”と日本語に訳されています。それ以外にも、自己肯定感、自己有能感、自己受容、自己評価、自己効力感など、自己に関する感覚が多く存在します。

セルフエスティームとは、1892年に、アメリカ合衆国の哲学者・心理学者であるウィリアム・ジェームズが、“self-esteemは、successをpretensionsで除したもの”という公式を定義しました。

Successは「成功」、Pretensionsは「願望」と日本語に訳されました。

「成功」とは、自分が立てた目標が達成したことだけでなく、他者からの称賛や社会的名誉など外的なものも関係していると考えられています。そして「願望」には、こうありたい自己という理想やあこがれだけでなく、こうあらねばならない自己という責任や束縛のようなものも含まれる場合があると考えられています。

つまり、ジェームズは、セルフエスティームとは、一人ひとりの人生における、こうありたいという自己の理想や、こうあらねばならないという自己の責任を含む「願望」に対し、実際の目標達成や、他者からの称賛や社会的名誉などを含む「成功」の割合であると定義したのです。

                

「成功」と「願望」、それぞれを掘り下げると、私たちのセルフエスティームを高めて、骨太にしていく方法が3つ見えてきました。

セルフエスティーム骨太対策1.複数のアイデンティティを持つことの重要性

W.ジェームズ(1890)は、自己の構成要素としての三分類(物理的、精神的、社会的)の内、社会的自己は「他者によって認識された自己のいろいろな特徴から構成される。つまり、個人が所属している集団の数だけ社会的自己は無数に存在するとされる。

肯定的な自己評価の領域がたくさんあるほど、どれか一つの領域で失敗しても、他の成功でセルフエスティームは支えられ、安定的に高く保つことができると考えられています。

わたしを例にとると、個人事業主として、企業からの仕事を責任もって遂行する役割を担っている自分、社団法人の代表として、社会に貢献する役割を担おうとしている自分、キャリアコンサルタントのインストラクターとして役割を担っている自分、家庭をマネージする役割を担う自分、卓球クラブメンバーとしての役割を担う自分・・・など、複数のアイデンティティが存在しています。そしてその一つひとつの中に、役割を担っている自分があり、他者から認識されている自分が見えてきます。

あなたも、きっとたくさんの役割を担っているのではないでしょうか。

それぞれの集団の中での願望や成功が存在し、自分の願望よりも成功が多ければ(つまり分母よりも分子が多くなれば)、肯定的な自己評価が高まっていると言えます。

複数のアイデンティティを持つことは、肯定的な自己評価の柱が複数あるわけなので、一つの領域で失敗しても、セルフエスティームの痛手は少なく、安定することになります。

このように複数のアイデンティティで自分を捉えられると、セルフエスティームは安定的に高く保てるというわけですね。ですから、社会の中で複数の役割を担う環境を持つことで、あなた自身の精神的な安定を生みだすことが可能となります。

セルフエスティームの公式は分数の形で表されると前述しました。この式でセルフエスティームが低下する状態には、二種類の原因があります。それは成功の喪失する時と、願望や理想が肥大化する時です。

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セルフエスティーム骨太対策2.セルフエスティームは変動するもの。低下したら回復力でリカバー。

セルフエスティーム(以下SE)は、失敗して低くなったり、成功で取り戻したりする変動性なのです。

たとえば、学業成績の低下、仕事の失敗、上司、友人、家族からの否定的評価、人体的な能力や魅力の損失などが成功の喪失にあたります。このような成功の喪失によって、SEは低下します。

もしも自分にとって価値ある領域で失敗すれば、セルフエスティームは一時的に低下します。その時、他の領域で肯定的な自己評価を得ていれば、全体としてのセルフエスティームは支えられています。そこで、低下したセルフエスティームに対し自分を動機づけて、自己評価の向上のために努力をしたり、他者とのつながりを再確認したりすることで、最終的にはSEの回復力で安定的に高く保つことができます。

しかし、自分にとって重要な価値ある領域で失敗して、セルフエスティームが低下したら、どうしたら良いでしょうか。

まず、目標達成する方法を考え直すことから始めてください。どこで失敗したか明確にしていきましょう。良いところは残して、つまずいたところは、どうやればうまくできそうか考える。周りからアドバイスをもらうのも良いですね。そして、しっかりとプランを作る。カレンダーに実行計画をスケジュールに入れる。あとは行動に専念するだけです。

SEは、高いから良いとか低いから悪いといった関係性ではなく、SEの脅威に対する回復力と呼べるような動的システムが機能することが大事なのです。やり抜く力ーレジリエンスを育てていきましょう

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セルフエスティーム骨太対策3.今の現実を自己受容する

例えば、あなたの願望や理想が肥大化するほど、成功の比率が小さくなるので、現実は不満足の連続になります。現実の自分とかけ離れた願望や理想を描いても、それが実現するわけもありません。現実を無理やりに願望に近づけようとしても、SEは低下するばかりです。

むしろ今ある現実の自分が、努力して手が届くレベルの願望や理想に変えていくことで、SEの低下を防ぐことができるはずです。一気に願望を達成するのではなく、自己の理想像を縮小させることで、今のありのままの自分を良いと思えるように調整することが必要です。

あきらめることではなく、ホップステップと徐々に願望や理想を育てていくイメージを持つと良いと思います。そのためには、今ある現実の自分を知ること、そして受容することが必要になりますね。

自分にとって重要な願望が打ち砕けたら、セルフエスティームが低下します。そんな時、どうしたら良いでしょう。

今ある現実の自分をまず受け止めましょう。出来なかったことに目を向けず、出来ていることに目を向けます。それが、今ある現実の自分です。まず自分を認識することが重要です。自分を動機づけるのは、自分自身ですから。

出来なかったことを出来るようにするには、スキルや知識を増やして自己成長させることが大事になります。学習を続けることで、自分の願望や理想を実現する可能性が現実味を帯びてくるものです。

ローゼンバーグが定義した、「じゅうぶんよい(good enough)」という感覚(SEの受容的側面)は、今ある現実の自分を受容し、背伸びしすぎない願望によるSEと言えます。自己受容や、自己肯定感がこの感覚にあたります。

そう考えると、ジェームズが定義した成功は、「とてもよい(very good)」という感覚(SEの評価的側面)であり、成功の拡大によるSEと言えます。成功を積み重ねて、自己成長する中で、自己効力感、自己有用感、自己有能感がこの感覚にあたります。

Pansies flower growing out of the brick wall on the sidewalk in historic Alexandria, Virginia.

いかがでしたか、セルフエスティームを高めて骨太にしていく3つの方法についてお話してきました。

最後にまとめておきましょう。

骨太①複数のアイデンティティには、それぞれのセルフエスティームがあるわけです。何本ものセルフエスティームが束になっていることを想像すれば、その中の1本にひびが入っても、他が支えてくれます。セルフエスティームはそうやって、強くなります。

骨太②そもそもセルフエスティームは、変動するもの。だから、回復力を機能することが大事。出来ていることに意識をもち、自分が成長してきたことを自覚し、自分を動機づけて、出来ていないことをできるよう努力をすることで、成功が得られます。

骨太③高すぎる願望や理想は、自分を苦しめるだけ。自分は何者か、まず自分を受容することからスタートしましょう。そして願望や理想が徐々に実現できるようにスモールステップを作っておく。今の現実の自分が分かれば、スモールステップの最初の段階の(背伸びして届きそうな)願望を目指して、集中して成功に向けてチャレンジできるでしょう。

人生を振り返るたびに、自分が成長できたことに喜びを感じるはず。その時あなたのセルフエスティームもきっと骨太になっています。

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引用文献:<小塩 真司(2021) 『非認知能力―概念・測定と教育の可能性』 ㈱北大路書房><ブルース・A・ブラッケン(2009) 『自己概念研究ハンドブックー発達心理学、社会心理学、臨床心理学からのアプローチ』 監訳者:梶田叡一・浅田匡 株式会社 金子書房>