不安感情。そこには、あなたのありたい姿が隠れている。
こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。
コロナ禍から自粛解除となった今も、すっきりとしない日々ですね。これからどうなるか先が見えない今、心のなかに「不安」が居座っていませんか。この不安について、コロナ禍を概観しながらお話ししようと思います。
コロナ禍では、働き方も多様な姿を見せ、リモートワークを取り入れている企業が、かなり増えたように思います。その後コロナ禍の自粛解除によって、再び働き方が微妙に変化してきました。リモートワーク中心の働き方にシフトした企業もあれば、前と同じオフィスワークに戻した企業、そして感染リスクを考え当分現状を継続している企業と大きく分けられます。
感染リスクを避けるために導入したリモートワークですが、通勤ラッシュから解放された点は良かったのでしょうが、就労時間は減少したものの、仕事をしながらの家事育児は、負担を感じて疲弊感が増したということも話題になっていました。とくに、共働きで子供も休校だった時は、仕事が落ち着いてできる環境を見つけるのも一苦労だったという話を聞いて、本当に大変だっただろうと思いました。
このような状況からworks編集部の4月14日~16日で実施した「仕事と生活に関わる変化に対する調査」で、日々コロナ対策をしながら仕事をしていくためには、このままこの働き方が続くのかどうか、気持ちの切り替えもうまくできず、「この社会で生きていくことへの不安があると答えた人は47.3%」、「自分自身のこれからについて不安があると答えた人は53%」と、意識調査の数値にも先行きの不安感が現れています (参考文献:仕事と生活に関わる変化に対する調査works No.160 Jun-Jul 2020) 。
JSELも、2020年6月16日~6月18日の期間、インターネットで「会社員の自己効力感」に関する調査を実施し、その一環で「新型コロナにより、未来に不安を感じると回答した人は75.7%」、「新型コロナを踏まえて未来に対して意識や行動を変える必要があると思うと回答した人は、77.5%」と、コロナに対する不安感情は高まっています。
働き方が変化したことで、働く意味が揺らぐ
今回のコロナ禍で働き方の変化について個々人を見てみると、リモートワークを経験したことで、通勤ラッシュに揉まれて毎日会社に行く意味を考えてしまい、この先に不安を感じたり、1週間のうちオフィス3日、リモートワーク2日など落ち着かない環境で仕事をしなければならない状況にイライラしてしまう。別の視点では、100%リモートワーカーは、一人で仕事をする孤独感から、簡単な仕事を押し付けられ、やりたい仕事が減っていると感じ、上司との関係性に悩んだり、オフィスワーカーは、出勤プロセスがないリモートワーカーの方が「ラクしてる!」と不公平感を持ってしまうことがあるようです。
コロナ禍による働き方の変化で、モヤモヤとした不安、いら立ち、不信など、あなたの心に沸き立つ不安感情は、あなたに何かを伝えるメッセージと捉えることもできます。その感情は、なぜ沸き起こってくるかを探索する必要があります。
想像力が不安を大きくする
モヤモヤとした不安や恐れは、人間なら誰でも感じます。ご存じのように、本能的に自分を脅威などから守る防衛機制のためなのです。森で散歩していたら、突然鳥が一斉に飛び立った時、何か危険が迫っているかと身構えて、息をのんで周りをじっと見る、ということも防衛機制です。対処の仕方が分かっていれば、さほど怖くないものです。
しかし、コロナ禍では、この社会は今まで通り維持できるのか、生活はこのままで大丈夫なのか、会社が倒産してしまうのではないか、学校がこんな状態で子供の学びは大丈夫なのか、企業が人を取らなくなって就職氷河期になってしまうかもしれないなど、次から次へとイメージが膨らんでいき、より大きな不安や恐れを生んでしまいます。なぜ私たちの心にネガティブ感情が次から次へと湧くのでしょうか。それは、人間の想像力―イメージの力―が生みだしています。しかし大事なことは、イメージに振り回らされるのではなく、現実の状況を把握したうえで、自分を守るための対処方法を考えて行動していくことに意識を向けたいですね。
「不安感情」の裏に、あなたの願望が隠されている
不安を別の角度から捉えてみると、あなたの在りたい姿や、大切なものを守りたいという気持ちがこの「不安感情」の裏にあると考えられます。私たちは、漠然としながらも、希望や願いを持っています。自分の潜在的に抱いている願望がなにかしら揺らぐと、「不安」という感情で私たちに気づかせるのです。
例を使ってお話ししますね。あなたが上司から大事な取引先のプレゼンテーションを任されたとしましょう。あなたは、プレゼンテーションの経験が少ないので、うまくできるかとても不安になります。ですから「なんで上司は私にやれと言ったのだろうか」と上司に対してネガティブな感情が湧くかもしれません。でも、実際は自分が不安を感じているのは、「プレゼンテーションがうまくできる自信がない」と思っている自分に対してです。
では、自分のその気持ちを掘り下げてみましょう。「うまくできる自信がない」ということは、「自信があったらプレゼンする」とも聞こえますね。つまり「できるものなら、プレゼンテーションをうまくやりたい」というありたい自分が見えてきます。つまり、この不安は、自分が課題をこなしたい、さらには自分の評価を高めたい、自己成長したいという潜在的な願望がプレゼンをするという課題によって、心が揺いで不安感情として表れているのです。自分の願望を揺いだままにとどめず、プレゼンテーションのリハーサルをすることで、自信がもてるようになれば、不安は自然と解消されていきます。
不安をもたらすネガティブな経験は、自分を成長させる機会
不安や恐れを伴うネガティブな経験は、できたら避けて通りたいと思ってしまうものですが、自身のためには、自分のアイデンティティ発達を促し、人生の意味や目的を探求する機会を与えてくれる、貴重な経験と捉えることができます。それによって自分の価値観や大事にしたいものに気づくチャンスになるのです。今ある不安とゆっくりと向き合いながら、自分の人生にとってのその経験の意味を理解し受容することで、自己肯定感も高くなります。「不安」は、自分はどうありたいか、そしてどうしたらよいかを教えてくれるサインになります。
不安と向き合うエクササイズ
前述で話した不安と向き合う簡単なエクササイズがありますので、ちょっと取り組んでみませんか?今、ご自身でモヤモヤした不安を書き出してみてください。たとえば、人と対立するのが恐い、大勢の前で話すのが不安だ。泳ぐのが恐い。コロナが恐い。・・・など、色々浮かんできたことをメモしてみます。
書き出したら、一つ選んで、こっそりと声に出して言ってみます。声に出す時は「私は、~するのが不安だ、または恐い」と言います。例:「私は、泳ぐのが恐い」「私は人前で話すのが不安だ」「私は、コロナに感染するのが恐い」のように言ってみてください。
次のステップは、「私は人前で話すのが不安だ」と言った後に、「私は、何を想像して恐いと思っているのか」を考えます。そして、「私は本当に~したい。でも私は、」を加えて言ってみます。例:「私は本当に人前で話したい。でも私は、大勢の前で緊張して真っ白になるのではないかと想像すると恐い」。「私は本当に泳ぎたい。でも私は、溺れてしまうのではないかと想像すると恐い」「私は本当に健康でいたい。でも私は、コロナ感染するのではないかと想像すると不安だ」。ご自分でも何を想像して不安なのかを考え、それを声に出して言ってみることで、自分は何を想像して怖がっているのか、自分はどうありたいのか、どんな人間になりたいのか見えてきます。必ず、声に出してください。声に出すとは、自分が行動したことなのです。自分の在りたい姿や価値観に気づける機会になることを願っています。そして、その次にどうしたら良いかが、あなたには見えてくると思います。
エレノア・ルーズベルト -(米国のファーストレディ、人権活動家、世界人権宣言の起草者 / 1884~1962)
自分にはできないかも知れないという恐れに真正面から立ち向かうたびに、あなたは強さと自信と経験を勝ち取るのです。だから、できないと思うことに挑戦してごらんなさい。