セルフエスティーム(自己肯定感)を高めるための新習慣㉜

こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。
セルフエスティーム(自己肯定感)を高めるためのエクササイズをお届けします。

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初めてのことに出会った時、私たちは、思わず周りの人たちの行動を見て、同じ行動を選んでいます。
たいていの場合、その判断で問題ありません。
でも、不確実な時代、誰も経験したことのない状況では、それでは通用しないのです。

まったく経験のない出来事に出くわせたら、あなたはどうしますか?
たぶん、周りの動向を見て、周りと同じことを選択するでしょう。
これまでは、それで事なきを得てきました。

不確実な社会で、あなたの判断が間違う理由とその対処法とは

先の見えない時代に、未来を正しく判断するには、どうしたら良いでしょうか。
そして私たちは、どのように”行動を決めている”のでしょうか。
「よく考えて決めている!」と言いたいところですが、じつは、そうとは言い切れないのです。   

今回は、人が間違った判断を 何故かしてしまう、“社会的証明の原理”について、4つの具体的ケースでお話しします。

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私たちは、日々経験してきた日常生活では、即時に判断しています。
例えば、朝起きてから家を出るまで無意識のうちに行動出来ていることなどです。
つまり、そのほとんどが自動的に判断しているのです。
それを「判断のヒューリスティック」と言います。
しかし、VUCA時代の私たちは、今まで経験したことのない出来事に遭遇していきます。 

ちょっと前のコロナ禍では、多くの「先生」や「専門家」という人たちが、専門知識を述べていらっしゃいました。
誰も経験したことのないコロナについては、いろんな捉え方がありましたね。
そんな状況では、私たちは、マスコミ報道でよく顔を見る人やSNSなどから、“いいね!”をたくさんもらっている先生が正しいのではないかと、自分も周りと同じものを正しいと判断しがちだったのではないでしょうか。

これは、“周りの人たちが、何を正しいと考えているか”を基準にして物事を判断する「社会的証明の原理」によって導かれていますが、周りの人も良く分かっていない状況、つまり不確実な状況では、社会的証明の原理を信じてはいけないという事実があります。

1.じつは、状況が不明確で自信がないとき、人の判断は間違えやすい

過去にあった有名な話があります。ニューヨークのジェノヴァーズ事件です。
38人の目撃者がいたのに、誰も警察に通報しなかったというものでした。
それもニューヨークの路上で30分以上の間に、3回にわたる襲撃を受けていたのに。
大勢の人がその場に居合わせながら、誰ひとり犠牲者に対して手を差し伸べようとしなかった。
この事件について、心理学者のラタネとダーリーは、多くの目撃者がいたから、誰も助けなかったと分析しました。
みんなそれを見ていたから、私がやらなくても、きっとほかの人が通報しているだろうと思っていた。
また、その時周りの人たちの行動を見て、同じ行動を選んでいたというものです。
集合的無知と言われている現象だそうです。

もし今、同じことが起こったら、あなたはどうしますか!
人の振り見て、わが振り直せ。じゃ、ダメ!
この事件の話は、もしかしたら皆さんも聞いたことがあるかもしれません。
黒人女性が犠牲になった事件でした。
「よくわからないことには近づかないでおこう」「何となく怖いから避けておこう」「誰かやるだろうからかかわらないでおこう」などと思ったことは、誰にでも経験があるのではと思います。 

ケースとは違いますが、私たちの身近なことでも、同じようなことが職場で起きていますね。
みんなが残業しているから、みんなと同じように自分も残業しないとまずいのではとか、休暇を取ろうと思うけど、周りが休暇を取らないから、みんなと同じように私も休暇は取らない方が良いって思ったことありませんか。
周りに合わせてばかりでは、自分が疲弊してしまいます。
自分らしく生きなければ生き抜くことはできない時代です。
現在の不安定な状況の中で、行動を起こすことは勇気がいることですが、あなたは今何を感じ取っているのか、自分はどうありたいかを思い起こし行動することを忘れないでください。

「私は、~する」という主体性をもつことが大事だということですね。

行動に迷ったとき、「私はいま、集合的無知に陥っているのかも!」と、自分に問いかけることが重要です。

2.専門家=正しい?

コロナ禍で、科学者や医療従事者が口をそろえて新型コロナウイルス・ワクチンやマスク着用の必要性を訴えました。
一方で、SNSなどではそれらを陰謀説などと否定する専門家(?)が勢力を伸ばすなど、2020年に発生したパンデミックは社会を大きく揺るがす議論に発展しました。
それについて、アムステルダム大学の心理学者であるSuzanne Hoogeveen氏らの研究チームは、24カ国で募集した1万195人のボランティアを対象に、発言の信頼性の評価が発言者の属性に、どの程度影響されるのかを確かめる実験を行いました。

アルゴリズムが自動生成したデタラメな文面を、「科学者の発言」もしくは、スピリチュアルな分野の第一人者である「教祖の発言」として参加者に示して、どのくらい信頼できるかを回答してもらいました。
この実験の結果、科学者の発言はスピリチュアルな教祖の発言より信頼性が高いと評価されることが分かりました。

具体的には、同じ意味不明な文章でも「科学者」の発言だとすると76%の参加者が「信頼性が高い」と評価したのに対し、「教祖」の発言だと55%にとどまったとのことです。
理解不能な文章でも「科学者の発言」だと思うと、もっともらしく見えてくる現象を、研究チームはアルベルト・アインシュタインにちなんで「アインシュタイン効果」と呼んでいます。

“専門家の先生が言っていることは、真実に違いない“と脳が自動的に、”先生=正しい“と判断する傾向があるということですね。

事実・情報を鵜呑みにしないで、クリティカルに吟味して、自分で選択することを心がけたいものです。

3.“自分と似た他者”のリードに従う傾向がある

社会的証明は、人の意思決定に多大な影響を及ぼしますが、ニュースで有名人の自殺を報道した後、自殺者数が増加するという事実があります。
米国の社会学者ディヴィッド・フィリップス(David P. Phillips)が、1974年米国大手紙の自殺報道によって自殺者数の増加に影響を与えていた可能性を明らかにしました。
彼は、その現象を「ウェルテル効果」と名付けました。
命名の理由は、二世紀以上も前の話ですが、ゲーテ著『若きウェルテルの悩み』の発刊後に、主人公のウェルテルの自殺に影響を受けたとみられる自殺がヨーロッパ中で増加していたことから名付けたものでした。

日本でも、有名人の訃報などに影響されるケースも多くあります。
この社会的証明は、自分にとって重要な人物がその思いにどう対処しているかが重要なのです。
その人物の行動を正しい行動と判断して、真似て同じ行動をとるのです。 

自分に似ている他者を真似るのでなく、自分の中にある、”ありたい姿“を見出すことが重要です。

4.あなたを動かす力

ある一つの経験から”私は〇〇が苦手“と脳に刻まれると、自分から苦手に取り組もうとは思わない傾向になります。
そのような”苦手という思い込み“の認知の歪みから行動できない時には、社会的証明の原理をプラス方向に利用して、思い込みをコントロールできるケースがあります。

心理学者のアルバート・バンデューラは、この社会的証明で、望ましくない行動を取り去る方法の開発をリードしてきました。
初期のある研究で、犬を怖がる3歳から5歳の子供たちを選んで、その子たちに“小さな男の子が、犬と楽しそうに遊んでいる様子”を1日20分見せました。
するとわずか4日後には、子供たちの67%が犬を可愛がり撫でまわせるようになったのです。
その後、1か月後に再び調査したところ、恐怖心は低いままでした。
最も効果があったのは、たくさんの子供たちが、さまざまな犬と接している場面を見たときだったそうです。
他のみんなが、犬と楽しく過ごしている事実を見て理解したから、恐怖心が消えたのです。

脳は、合理的で、じっくり考えることが苦手だから、出来るだけ自動的に判断する方法を選んでしまいます。
自分がじっくり考えようと思えば、脳がやっと機能していくわけです。
ですから、思考することを忘れずに行動したいものです。

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いま、未来に向かってどう選択していくかを考えると、今までのように、自動的に判断するだけでは取り返しがつかないことも起きそうです。
私たちは、周りの人たちの行動を見て正しいかどうかでなく、自分事として物事に取り組む必要があります。
今を生き抜くためには、奮い立たなければならない時には、立ち上がれる自分でありたいです。
まずは、自動思考に任せる自分から、広く事実を見極めて自分はどう思っているのか、どう感じているのかを意識して行動することに、舵を切っていくことが大切ですね。