国際比較から見える若者の課題、そして私たちの課題

「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」を概観して

こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。

内閣府が2019年に発表した 「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によれば、調査対象となった満13~29歳までの男女(各国1000人)に対して意識の特徴等が調査されました。

この結果を踏まえて、私の視点で読みとったことは、グローバル社会と言われる中で、諸外国(6か国:韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)と日本の自己肯定感の違い、また社会との関係性の捉え方に差が多くみられました。そして徐々にではありますが、その差が大きくなりつつあることを感じました。この調査は2013年にも実施されており、その調査結果と比較しても、徐々に日本が低下している点が多いように思えます。私がこの調査を概観する目的は、諸外国と日本との差が高いとか低いとかを評するためでなく、日本の若者をグローバルな視点で見たとき、諸外国とどう違うのかを探り、そこから日本の若者の課題を見つけて、キャリア形成に繋がるヒントを得たいと考えています。

日本の若者は、自分自身に満足しない?

自己肯定感は、今までの心理学研究の国際比較調査からも、欧米に比べ日本と韓国は低いという結果がでていますが、今回は、日本だけが取り残されてしまっているように感じました。

今回の調査では、若者自身の自己イメージは、「自分自身に満足している」と回答した者の割合は、6か国では73.5%~86.9%に対して、日本は45.1%と半分にも満たなかった。また、「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」と思っている割合も6か国では、62.5%~80.7%に対して、日本は46.3%と圧倒的に低い結果となっています。

一方、「自分について誇りをもっている」ことについて、日本の若者は「やさしさ」69.1%が最も高く、次いで「まじめさ」60.1%、「忍耐力、努力家」55.9%でしたが、6か国では、「やさしさ」の割合は、79.5%~93.9%、「まじめさ」は、77.9%~87.5%、「忍耐力、努力家」は、73.9%~86.5%であり、ここでも日本はかなり低い結果となっています。

自分について誇れない日本の若者。×容姿、×運動能力、そして×決断力と意志力

特に、日本の若者が回答した割合が最も低かったのは、「容姿」31.9%(6か国平均が68.9%)、「体力、運動能力」が34.2%(6か国平均が66%)、「決断力、意志力」41.9%(6か国平均が77.3%)でした。日本の若者は、自分に対して悲観的であり、自分の能力に対する自信のなさがこの数値から表れていることが示唆されます。

自分への満足度が高い」日本の若者の姿は。

日本の若者の「自分への満足度が高い (45.1%) 群」とその他の自分自身のイメージについてのクロス集計からみえたこと。

クロス集計から見えたのは、「自分への満足度が高い」と「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」に、『そう思う、どちらかと言えばそう思う』と回答している割合が高い。そして「自分は役にたたないと強く感じる」に対して否定的な回答が多いことから、「自分は役に立つと感じている」ことがわかる。 「自分への満足度が高い」と「明るさ」「決断力、意志力」「容姿」も、 「自分について誇りを持っている」と回答している割合が高いことが分かったのです。

これらの結果から、自分に対して満足度が高いと、自分の考えは相手に述べられる、新たなことにも意欲を持って取り組むことができる。自分は役に立つと実感している。そして、他者に対して明るく、決断力と意志力を持ち、自身の容姿がどうあれ受容していると言えそうです。逆説的にみれば、いろいろな経験の積み重ねが自信を育んでいく(自己効力感)ことで、自分に対して満足度が高くなる(自己肯定感)ということが示唆されます。

ぼんやりした目的意識で学校に通っている?

「学校に通う意義」について日本の若者に聞いたところ(「意義があった/ある」と「どちらかといえば意義があった/ある」の合計)、諸外国も同様で「一般的・基礎的知識を身に付ける」が、日本80.4%(フランス93.7%、ドイツ91.5%、アメリカ89.7%)で最も高く、次いで「学歴や資格を得る」日本72.7%(フランス86.1%、ドイツ85.8%、アメリカ84.1%)となった。

しかし、諸外国との差が顕著だったのは、「仕事に必要な技術や能力を身に着ける」日本59.4%(ドイツ87.2%、フランス86.9%、アメリカ84.4%)、「自分の才能を伸ばす」日本63.6%(フランス85.9%、ドイツ85.5%、アメリカ81.2%)、「先生の人柄や生き方から学ぶ」日本54.9%(アメリカ72.8%、イギリス70.3%、フランス67.5%)での回答だったのです。 この結果から日本の若者の学校に通う意義は、一つには、一般的・基礎的知識を得るためではあるものの、ただ学歴や資格といった肩書を求めて通っているようにみえてしまいます。諸外国との比較から、能力を身に着ける、才能を伸ばす、世代の違いから学び取るという意識が醸成されていないように見えます。

自分への満足度は、何によって高まるのだろうか

可能性をたくさん持っている若者たちが、自由にチャレンジできる環境が小さい時から必要だということ。それぞれの興味の違いを活かし、勉強だけでなく、五感で学ぶ、人との関係性や、得意なことも苦手なことも仲間と一緒に学び、自分で選択していく力を養う、そんな環境は作れないだろうか。それに向けて活動することが、私たちの課題です。

経験の積み重ねが人間を育てる。自己肯定感と自己効力感は両輪である。それらを日々養っていくことが重要だと考えています。「自分は大丈夫、何とかなるさ。」と逃げずに取り組む。それを積み重ねていくと、きっと満足している自分に出会うと思うのです。